研究課題/領域番号 |
22H00972
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大高 研道 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00364323)
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研究分担者 |
藤本 穣彦 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (90555575)
宮崎 隆志 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (10190761)
岡 幸江 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50294856)
若原 幸範 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (80609959)
走井 洋一 東京家政大学, 家政学部, 教授 (30347843)
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | コミュニティ形成 / 共同・協同・協働 / 地域学習 / 社会教育 / 地域づくり / 社会的包摂 / ワーカーズコープ / 協同組合 |
研究実績の概要 |
本研究は、教育の持つ社会的文脈に着目してきた社会教育学を、実践コミュニティの中から生まれた協働的な関係を基盤とする持続的な自己拡張的学習の文化として生成・定着させる創造的学習の総体として捉え直すことによって、社会教育の現代的なコミュニティ的価値を明らかにすることを目的としている。このことを踏まえたうえで、2022年度の主たる研究活動は以下のとおりである。 理論面では、協働概念の再検討を基盤としたコミュニティ形成と教育・学習に関わる理論研究に取り組んだ。具体的には、自生的・自然発生的に形成された「共同」、共通の問題解決に取り組むための自由意志に基づいた「協同」、他者との違いを前提としつつ折り合いをつけるプロセスに着目した動的な概念として「協働」概念を整理し、コミュニティ形成プロセスに関わる学習論の分析枠組みを検討した。 実証分析では、協同労働の協同組合(ワーカーズコープ)を対象として、協同実践としての実践コミュニティが地域へと広がりを見せる過程に伴う学習過程の考察を試みた。2022年度はとくに、北海道内(札幌・江別・恵庭・苫小牧・釧路)のワーカーズコープのフィールド調査を集中的に行った。北海道では、公共施設管理運営業務からスタートしつつも、単なる下請け業者にとどまらず、そこで出会った地域住民との交流を通して見えてきた地域課題やニーズから新たな活動や事業に取り組んでいる。その協同実践の先進性に着目し、地域の課題や未来について語り合い、気づきを共有し、実際に行動する対話的協同実践の展開過程を検討した。その研究成果の一部は、「協同実践で拓く学び」(2023年、学文社)として刊行されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた理論・実証研究は概ね順調に遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き本研究において設定した理論・実証分析面での課題に即して、以下の研究活動に取り組む。 理論面では、地域を基盤とした学びと協働の蓄積過程を結びつけることによって、異質性・多様性を認め合う学習空間の創造にむけた地域学習論の展開の可能性と課題を明らかにしたい。とくに、パウロ・フレイレの限界状況論を踏まえて、排除や限界状況への当事者自身の気づき(「自ら限界づけている状況」認識)を可能的な未来を創る出発点としてとらえる宮﨑(研究分担者)との共同研究を通して、「過程的存在」としての自己の可能性を拡張し、限界を突破する実践枠組みとしての協同(協働)論、さらに、地域住民自身が主体的に地域の現状(限界状況)を把握し、協同し、新たな未来を創るプロセスにかかわる地域学習論の再構築をめざす。 実証分析では、地域の暮らしに必要な事業を市民自らが起こし、地域づくりに取り組んでいるワーカーズコープの実践を取り上げ、異質な他者との協働の成立・展開条件を学習論的観点から明らかにすることは継続課題となる。また、本研究では、特定の地域を対象に、地域課題に即した多面的な角度から共同調査研究を実施することをもう一つの研究課題としている。研究計画では宮崎県五ケ瀬町を対象とした中山間部の事例分析を計画していたが、町政の変化などの理由により、廃校となった旧鞍岡中学校の活用を検討する地域住民組織体制も転換を余儀なくされており、研究計画の再検討が必要となる。その調査研究の内容・方法については、地域住民自身が設立した五ケ瀬地域づくり研究所の協力を得ながら再構築したい。
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