研究課題/領域番号 |
22H00974
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
森下 稔 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60300498)
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研究分担者 |
羽谷 沙織 立命館大学, 国際教育推進機構, 准教授 (10576151)
楠山 研 武庫川女子大学, 教育学部, 准教授 (20452328)
鈴木 賀映子 帝京大学, 教育学部, 准教授 (60618221)
劉 靖 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (60747864)
市川 桂 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60754546)
S Kampeeraparb 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (90362219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 比較教育学 / 境界研究 / 基礎教育 / 国境・境界地域 / 越境通学 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ボーダレス化が進んだ世界においていくつかの国境・境界地域では隣国の学校に毎日越境して通学する児童の存在について、境界研究(ボーダースタディーズ)の分析法を用いて、①越境通学児童の事象が生じる背景や要因を国境・境界の透過性の変動の観点から解明すること、②越境通学と国民形成とがどのような関係になるかを解明すること、③越境通学児童の比較教育実践を調査対象とする4地域で比較するメタ比較に取り組み、越境通学児童に係る理論的分析枠組みを構築することである。 本研究課題を推進するために、第1年度にあたる2022年度は、研究代表者の他に研究分担者6名、研究協力者9名の協力を得て実施した。採択の結果を受けて、研究活動に確実に着手するため、研究期間前の2022年3月に研究代表者・研究分担者によるオンライン会議を実施した。また、2023年2月には、研究協力者を加えて第1回打合せ会議を東北大学において実施し、研究計画および成果の共有・集約を図った。その結果を踏まえて、越境通学児童に関連する特集を『境界研究』誌の特集として公表した。 当初計画では、コロナ禍で海外における現地調査が困難であることを踏まえて、現在までの研究成果を研究メンバー間で共有し、次年度以降の調査のための準備をする計画であったが、渡航制限の緩和により、次年度に計画していた現地調査の一部を実施できた。実施できた地域は、アメリカ・メキシコ国境、タイ・ミャンマー国境のタイ側、タイ・カンボジア国境のタイ側である。いずれも、コロナ禍により国境の透過性が低くなり、オンラインなどの遠隔授業により対応されていることが確認された。ただし、渡航や現地での活動には制約が大きく、次年度調査に向けて予備的調査の段階に留まらざるを得なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では予定していなかった海外における現地調査に一部着手できたことは、当初計画を上回っていると言える。ただし、現地における調査活動の制約が大きく、十分な調査が実現できたものではない。また、当初予定していなかった『境界研究』誌における特集に取り上げられたことも当初計画を上回る成果と言える。 なお、国際便の航空券代の高騰が著しく、申請時の見積もり額を大きく上回る支出を要したことから、他の経費の執行に影響があった。具体的には、打合せ会議への国外研究者オンライン招へいを見送ったこと、ならびにホームページ開設を延期した。そのため、遅れている面もあった。 以上のことから総合的に判断して、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の目的を達成するため、本年度に引き続き、国境・境界地域における現地調査を柱とする研究計画を推進する。本年度に実施できた調査では、主としてコロナ禍によって国境の透過性がどのように変動したのか、また透過性の低下に伴って国境を越える越境通学にどのような影響があったか、さらには透過性の回復によってどのような実態があるかについて取り組んだ。今後は、越境通学の現象が生じる背景や要因の解明や、国民形成のための教育との関係性の解明にも取り組めるようにする。また、今後新たに加わる調査地として、日本在住の中国人研究者による中国・ミャンマー国境地域を予定するが、中国人研究者であっても辺境地域への調査目的での立ち入りには困難が予想されるため、安全に十分に配慮しながら慎重に取り組むこととする。当初計画では、越境通学の現象が確認できていない地域でも、なぜその現象が生じないのかを調査することにしていたが、国際便航空券代の高騰を踏まえ、越境通学の現象が確認できている地域における調査を優先させ、文献資料の収集・整理を主とすることとする。 同時に、各メンバーの調査研究の経験を集約・統合しながら、理論的分析枠組みの構築を目指すため、研究打ち合わせ会議を行う。これらの研究成果について、日本比較教育学会やアジア比較教育学会などを活用して、国内外の学界に発信していく。
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