研究課題
研究は三つに分けて実施した。1)4歳から15歳の男女各50名を目標として全国から集められた1513件のデータをもとに「ことばのつかいかたテスト」(TOPJC)標準化の手続きを検討した。まず、月齢を説明変数とした線形回帰モデルを適用し、語用能力が年齢とともに発達することを踏まえたTOPJC標準化スコア換算表を作成した。これはTOPJCと同じ語用検査であるCCC-2の標準化手続きを踏襲したものである。ただし、加齢による語用能力の向上を標準化スコアに反映できているものの、9歳から11歳付近の年齢層の語用能力をやや過大に評価しており、線形モデルでのフィッティングには改善の余地が伺えた。交差検証を実施しながら、非線形を含めたモデル適用の妥当性を検討する必要が示唆された。2)TOPJCの語用障害アセスメントとしてのカットオフ値の検討、および自閉スペクトラム症(ASD)児の語用能力発達過程の検討を目的とし、4歳から15歳を対象に大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター及び大阪大学医学部附属病院小児科の協力を得て、2022年12月から現在までにASD児115名にTOPJCを実施した。あわせて年齢、性別、診断時期、ADOS-2またはADI-Rの得点、およびCBCLの得点を収集した。さらに金沢大学学校教育系の研究者を通じて難聴児20名からデータを得た。3)TOPJCの台湾語版作成可能性を検討するために台湾の研究者との打ち合わせを行った。
2: おおむね順調に進展している
標準化群のデータは15の年齢群(4-6歳は半年刻み)ごとに100名程度のサンプルを確保して収集することができた。これは研究計画時のサンプルサイズの倍であり、標準化の精度を高めることにつながると期待できる。また、臨床群としてASD児115名と難聴児20名からもデータを得ることができた。臨床群データ収集は、多施設共同研究の実施準備に時間を要したことにより若干開始が遅れたものの、2023年度も順調にサンプル数を積み増すことが予想され、当初の計画の達成に問題は生じない。さらに、標準化群の評価点計算方法について、今後非線形モデル適用による微調整が必要なものの、線形回帰モデルによりおおむね良好なフィッティングの、粗点-評価点換算表を得ることができた。これは本研究のコアであり、計画達成は順調と判断される。
標準化群のデータに新たに非線形モデルを適用し、より妥当性の高い粗点-評価点換算表を完成させる。臨床群データをASD児については200を目標に拡大する。この達成を待って、検査のカットオフ値の算出を行う。また、評価点ベースのASD判別性能を同定する。さらに難聴児のデータの拡大を図り、その語用能力の発達特徴を同定する。検査の台湾語バーションの作成に向けた、日台間の比較言語学的、異文化比較的な検証を進めるとともに、動画への台湾語のセリフと繁体字字幕の挿入にかかわる技術的な調整を行う。
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コミュニケーション障害学
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