研究課題/領域番号 |
22H01064
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
藤岡 達也 滋賀大学, 教育学系, 教授 (10311466)
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研究分担者 |
大辻 永 東洋大学, 理工学部, 教授 (20272099)
川真田 早苗 北陸学院大学, 人間総合学部(子ども教育学科), 教授 (20880363)
山口 克彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (30251143)
五十嵐 素子 北海学園大学, 法学部, 教授 (70413292)
村田 守 株式会社蒜山地質年代学研究所(地質技術センター), 地質技術センター, 研究員 (80239532)
榊原 保志 信州大学, 教育学部, 名誉教授 (90273060)
佐藤 健 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (90290692)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 防災・減災,復興 / 自然災害 / ESD,SDGs / STS,STEAM教育 / Web教材 |
研究実績の概要 |
SDGs(持続可能な開発目標)のターゲット及び指標や国連防災世界会議の成果文書等を整理し,防災・減災,復興に関する国際的な喫緊の課題の捉え方を示した。日本においては1995年阪神淡路大震災から2011年東日本大震災を経て,地震・津波災害だけでなく,気象災害・土砂災害,火山噴火など,例年,数多く様々な災害が発生しており,それらを教訓として蓄積された内容から,現学習指導要領を踏まえ自然災害に関する教育の総合・体系化の構築を進めた。例えば,学校教育では,教科・科目の中で,自然現象,防災・減災,発生後の社会体制を学んだり,安全・危機管理マニュアルの作成に基づく避難訓練・引き渡し訓練等を行う。地域においても行政によるハザードマップの作成・配布から防災士の養成,自主防災組織の活動まで,様々な取組が見られる。本年度の取組では,これらの共通のベースとなるSDGs,ESDの意義を明確にした。 実績内容として,日本列島で近代以降に発生し,近世の記録に残っている地震・津波による災害,気象災害・土砂災害,火山噴火による甚大な被害など,大規模な自然災害による被災地などの現地調査及び文献調査等から地域の多様な自然災害に関する防災,減災,復興に関する教育の現状・成果を収集,整理,分析した。さらに科学的リテラシー育成の基本としての地学教育の在り方を探った。これらを踏まえ,災害を自然環境,社会環境などSDGsの視点から,多面的に整理,体系化を進めた。それを基にしたICT教材を開発し,Webサイトを用いて,国内外へ防災・減災,復興等に関する教育情報を発信し,その評価等によって防災に関する包摂的な教育内容・方法を確立した。また自然災害や防災などの国際動向を集約し,現地情報や研究成果に基づき,SDGs,STEAM教育等を含めて開発したICT教材,教育プログラム等を基に自然災害に関する教育の展開例を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるSDGs,ESDの視点を重視した防災・減災,復興教育の総合化・体系化を行うために,まず列島内に発生した自然災害を地震・津波災害,火山噴火による災害,風水害(気象災害・土砂災害)に分け,自然要因,社会要因,防災・減災,復興について多方面から整理した。具体的には,日本の近代以降の甚大な災害を取り上げ,特に近年の兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震など,気象庁が命名し,教育界を含めた日本の施策に大きな影響を与えた自然災害に関し,SDGsを切り口として,事例を収集することができた。また,日本がホスト国となった3回の国連防災世界会議等とESD及びSDGsの動向について,関連性を具体的事例から探った。SDGsのゴールやターゲットでは自然災害に関連する内容は多く,特に気候変動に関連した自然災害の課題が明確になった。一方で,日本列島では,SDGs,持続可能な社会が国際的に論議される前から,自然と人間,人間と人間(社会)との関わり,つながりを重視した取組が見られた。成果の一部をGeoSciEdⅨ(第9回国際地球科学教育学会)で発表した。 国内の自然災害及び対策をSDGsの視点から分析,整理し,これらを基に学校教育から社会教育でも活用可能な教育方法,教育内容を持ったプログラム開発が当初のねらいであった。ただ,依然として学校での具体的な取組はコロナ禍の影響があり,予定していた現地調査等を踏まえた研究授業等での教育プログラムの実践及び分析は不十分であり,国外での対面実施も困難な点があった。そこで,これまでの研究成果に基づき,SDGs,STEM教育等を含めて開発したICT教材,教育プログラム等を用いて自然災害に関する教育を国内外へ発信することを重点化した。デジタルコンテンツ等のICT教材を開発するのが次の段階での取組と言える。まずは国内への発信に向けての大枠は整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
自然災害に関する教育の体系化に向け,日本の自然災害に関する教育の現状・課題・改善状況を継続的に収集し,科学的リテラシー育成の観点から教育の方向性を明確にする。つまり大規模な自然災害の発生後の防災,減災,復興の共通性・地域性を踏まえ,その後に生じた列島各地の災害等に関する教育界への活かされ方,課題を探る。特に近年頻発する気象災害・土砂災害に関して注視し,平成16年新潟・福島豪雨から平成26年8月豪雨,令和2年7月豪雨までの気象状況,地形・地質,地形改変など新潟,広島,福島や静岡等での近年の災害や復興を自然環境と人間活動の関係,危機管理への対応を分析し,災害に応じた教育内容,方法,教員研修,副読本の開発等の教育システムを整理する。自然災害に関連した訴訟も地震・津波,水害,火山・落雷など数多く生じており,災害の発生を人間活動からも捉える。継続して災害の発生状況を自然環境・社会条件,訴訟の検証等から素因・誘因等を分析し,自然災害等につながる自然現象のメカニズムを理解できる科学的リテラシー育成と,防災マニュアル作成や避難訓練等での危険予測判断力・行動力育成とを連動させる教育方略を開発する。次に防災・減災,復興を総合・体系化したICT教材・Webサイト等の開発を具現化する。カリキュラム・マネジメントを踏まえ,被災地では,OODAサイクルの視点を重視し,教育プログラム等の開発を進める。STEAM教材として防災・減災プログラミング教育の開発,展開を進め,教育機関等で実践・評価する。これまでの図版・写真等をWebに上げる枠組を整える。地域と連動した学校教育での教員研修・養成等での防災・減災教育等の取扱い,学校安全・危機管理までの内容・方法の現状と課題を集約し,開発したSTEAM教材,ICT教材等を加え総合・体系化を試みる。国内外の自然災害に関する国際協力や日本の貢献に関する事例を収集する。
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