研究課題/領域番号 |
22H01074
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 敬子 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10344532)
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研究分担者 |
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00533960)
大坪 庸介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80322775)
山末 英典 浜松医科大学, 医学部, 教授 (80436493)
野口 泰基 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90546582)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 主観的幸福感 / 遺伝子多型 / 日本人 |
研究実績の概要 |
今年度は、株式会社ジーンクエストと株式会社ユーグレナの遺伝子解析サービス利用者に対し、心理的特性、特に主観的幸福感についての追加アンケート調査を行った。そして、株式会社ジーンクエストのほうで、その結果から算出した人生満足尺度および主観的幸福感尺度と利用者から取得済みのgenotyping情報を用いて、各尺度のゲノムワイド関連解析を実施した。その結果、3つのSNPが同定された。うち2つ (rs61461200、rs2293171) は、韓国人を対象としたビッグデータ (Kim et al., 2022) においても同定されたものであり、これらのSNPには再現性があると推測される。なおこれらのSNPが幸福感に関連したさまざまな生理指標と関連するかを検討するため、名古屋大学の学生109名に対して調査を行い、幸福感に関連したさまざまな尺度に加え、自律神経系、唾液中のホルモン、血管拡張率等のデータを収集した。加えて、脅威を背景とした規範の厳しい文化ほどACCにおけるOXTRの発現レベルが高く、ACCにおけるOXTRの発現に関与している2つのSNPとリンケージのあるOXTRrs9840864のアレルの分布に顕著な地域差があることを指摘しているLee et al. (2022) を踏まえ、我々の既存のデータを再分析することでOXTRrs9840864と道徳基盤との関連を調べた。その結果、道徳基盤のうちCare/Harmに関してOXTRrs9840864と幼少時の養育環境の指標との交互作用があり、環境からのネガティブな影響を受けることで他者の擁護を支持しなくなる傾向は、日本ではマイナーな遺伝子型であるGGにおいてのみ見られた。一方でCをもつ人は他者の擁護の支持に関して環境からのネガティブな影響を受けにくく、そのことが厳しい規範を必要とする社会において有利に働いた可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
株式会社ジーンクエストとの共同研究は、概ね予定通りに進み、候補となる遺伝子多型を同定することができた。またコロナウィルスの影響で実験室実験に制約があったものの、その範囲内で可能なデータを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、引き続き株式会社ジーンクエストと共同研究を進め、アンケート調査で取得した環境要因に関する項目を加えた上でさらに分析を進めていく。また得られた遺伝子多型を評価するための実験室実験に関しても引き続きデータ収集を行い、妥当なサンプルサイイズが得られた段階で分析を進める。
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