研究課題
わが国の調査では、強迫症を含む不安症の患者数は2011年の57.1万人から2017年に83.3万人へと増え、統合失調症の79.2万人を初めて上回っており、これまで以上に有効な対策が求められている。また、不安症は受診率の低い疾患であり、過去12ヵ月間の受診率は23.8%(20~64歳)にとどまることから、未受診者を含む実際の有症状者は把握されている患者数よりもはるかに多いものと考えられる。本研究では、MRI脳機能画像(安静時脳機能画像等)および認知機能検査等の心理的指標により、不安症・強迫症に共通する不安に関与する脳機能ネットワークを同定するとともに、閾値下不安・強迫者と患者の異同を探索し、潜在的不安・強迫者を含む不安症者に対する低強度認知行動療法等の最適な治療法を選択できるバイオマーカーの開発を進めた。本年度は不安症9名、強迫症7名、健常対照者33名をリクルートし、症状評価、MRI検査、認知機能検査を実施した。既存サンプルのうち、社交不安症の重症度尺度であるLSAS得点が50点以上のものを閾値下社交不安とし、安静時脳機能画像を利用し、閾値下社交不安と社交不安症の判別に関わる安静時脳機能結合の探索を試みた。健常者と社交不安症者との間に有意差が認められる15の安静時脳機能結合を抽出したうえで、閾値下不安者と社交不安症者とを2クラス分類するロジスティック回帰分析を行った。その結果、LSASを用いた場合とほぼ同様の判別性能を示し、左側上外側後頭葉皮質と右側頭桓平面を結ぶ結合が分類に最も寄与したことが分かった。後頭葉は視覚、側頭桓平面は聴覚に関連することから、社交不安症の発症には、視覚・聴覚といった知覚が関与する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
不安症、強迫症患者と健常対照者のリクルートと検査実施、およびデータ解析をおおむね順調に進めることができた。
患者と健常対照者のリクルートと症状評価、MRI検査、認知機能検査を引き続き行うとともに、前年度までに得られた各種MRI画像と心理指標と治療効果との関連性を調べるためのデータ整備を行うとともに、集積したデータを用いて解析を進める。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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