研究実績の概要 |
本研究の目的は、現在の知覚が過去に知覚した内容と同じ方向へ偏っていく、知覚の系列依存性に関してその心理学的・神経メカニズムを主に個人差の観点から明らかにすることである。 本年度はまず、系列依存性が報告されて以降10年前後に出版された百本以上の論文をメタ解析し、知覚の系列依存性の特徴として、ある時空間窓内部において、前後の試行で刺激特徴が類似しており、注意が向けられていた刺激間でのみ知覚の同化が生じるという、現象の操作的定義を明らかにした(Manassi, Murai, Whitney 2023)。 さらに、方位知覚や顔認知といった複数の視覚特徴について、オンラインで百名単位の実験を実施し、数ヶ月置いて再度同一実験を実施することで、複数の視覚特徴に対する系列依存性の個人差とその長期的安定性を検討した。結果として、方位知覚のような基礎的な視覚特徴から、顔認知のような比較的高次な視覚特徴に至るまで(Murai & Whitney, VSS 2023)、長期的に安定した個人差が観察されることが明らかになり、現在論文投稿準備中である。さらに、視覚性ワーキングメモリの個人差と安定性についても研究発表を行った(村井、基礎心理学会2023)。
|