研究課題
五感の一つである味覚は、生命の維持に直結する食行動を左右する感覚である。これまで、多くの生理心理学研究によって、舌で受容された味覚情報が脳へ伝達される経路が明らかにされてきた。しかし、味覚がどのように感情的体験を引き起こすのか、その多くは不明である。本研究は、モデル動物であるマウスを対象として、感覚情報としての味覚を統合し、感情変化を引き起こす神経回路の解明を目指す。本年度は、給餌スパウトを舐める(以下リッキング)と、そこから液体味覚刺激が得られるオペラントリッキング課題用いて、マウスにおいて味覚刺激に対する好ましさ評価する行動実験系の確立を試みた。その結果、通常のマウスにおいて、甘味・うま味対する濃度依存的なリッキングの増加が観察された。一方、塩味および苦味はリッキング頻度を低下させた。しかし、低ナトリウム状態に置かれたマウスは塩味刺激に対するリッキングを増加させた。さらに、この塩味希求行動は、うま味の添加によって増強されることが示された。cfosタンパク発現陽性細胞の定量による神経活動の評価法についての予備実験を行い、味覚刺激による、関連脳領域におけるcfosタンパク発現陽性細胞の増加を確認した。また、カルシウムセンサーおよび神経伝達物質センサーの利用とファイバーフォトメトリー法を組み合わせることによるリアルタイム神経活動記録法についても予備実験を行い、その記録法を確立した。さらに、DREADD法による神経活動抑制のために必要な、ウイルスベクターを用いた標的脳領域における抑制性DREDDの発現にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
マウスを対象として、単一および複合味覚刺激に対する好ましさを評価する課題を確立することができた。また、神経活動の記録と操作に向けた複数の予備実験を通して、翌年度以降の研究遂行に資する重要なデータを得ることができた。
本年度において確立した行動実験課題を行っている最中のマウスにおける神経活動の記録と操作を行う。これにより、感覚情報としての味覚を統合し、感情変化を引き起こす神経回路の解明を目指す。
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