研究実績の概要 |
本研究では、数量知覚が特定の数への順応によって変容することを確かめるために、まず予備的な心理物理実験を行う予定であった。しかしながら、最近、数量の情報を視覚的なドットによって呈示する場合、ドットの色を順応刺激とテスト刺激で変化させると、陰性残効が顕著に減弱することが報告された(Grasso et al., 2022)。この結果が正しいとすれば、従来の白と黒のドットを半々ずつ呈示する刺激方法で得られた順応効果の実験の多くは、想定されているドットの「総数」ではなく、「半数」への順応効果を評価していた可能性があると考えた。そこでまず、従来の白黒のドットを用いた刺激呈示方法の妥当性を再評価する必要があると考え、一連の心理物理実験を行った。その結果、順応刺激とテスト刺激の間の輝度極性を反転させると、陰性残効の強度は(同一の輝度を用いた場合に比べて)有意に減弱するものの、なお有意な陰性残効が残ることが明らかとなった。また、順応刺激及びテスト刺激の直後にマスク刺激を挿入して網膜残像を抑制したり、テスト刺激の輝度極性を試行間でランダム化して輝度の予測性を抑えても、この結果はロバストであった。この成果は国際学術誌へ投稿するために、現在論文執筆中である。
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