研究課題/領域番号 |
22H01120
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河澄 響矢 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (30214646)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リーマン面 / ループ演算 / トゥラエフ余括弧積 / スピン構造 / フェンチェル-ニールセン座標 / 写像類群 / ねじれ係数コホモロジー / 組紐群 |
研究実績の概要 |
前年度の2次ループ演算が0となることがわかり、これまでの構成の最難関である RIII ムーブについて最初から考え直すことになった。その結果、位相的に自然な条件のもとでは、基点付きループの2つの交点を用いるループ演算で自由ループに値をもつものの次元は3であり、そのうち2次元は基点付き Turaev 余括弧積で表されるが、残りはそうではない。この残りは自由ループ上では well-defined ではないが、長い夜が明けたというのが率直な感想である。交点の個数を3以上にすると計算量は膨大になるが、24年度に実施する。 前年度の成果である閉曲面のパンツ分解にともなう胞体分割をもちいた Fenchel-Nielsen 座標の再構成をスピンリーマン面に拡張した。超リーマン面への応用を目指している。 Arthur Soulie との共同研究により、曲面の単位接束のホモロジー群およびその外積に係数をもつ写像類群のねじれ安定コホモロジー群のTor群の計算を行った。我々の限界である5次外積までの計算チェックと論文執筆がようやく終了し、プレプリント arXiv: 2311.01791 として公開した。双変函手係数の具体例の研究を開始した。 共同研究者 Christine Vespa と組紐群のねじれ係数コホモロジーの計算を行った。2次に現れる非自明な関係式の適切な書類が当面の課題である。 国際研究集会「Mapping class groups: pronilpotent and cohomological approaches」をスイス Les Diablerets において共催した。本研究の主題である写像類群のコホモロジーとループ演算について集中的な議論を行うことができた。国内開催の研究集会「リーマン面に関連する位相幾何学」「葉層構造論シンポジウム」「葉層構造の幾何学とその応用」を共催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高次ループ演算については、点付きトゥラエフ余括弧積と線型独立なループ演算の発見によって、長年の失敗の連続から脱することができたと考えている。また、ねじれ係数コホモロジーの計算は着実に進展している。23年9月にスイスで開催した本研究の中心テーマに関わる国際研究集会は多数の協力のもと成功したと言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
高次ループ演算の計算を続行する。背後に仄見える代数的構造を摘出することが当面の課題である。ねじれ係数コホモロジーの計算をこれまで通り着実に進める。本研究で発見した Fenchel-Nielsen 座標の再構成の新しい応用を見出すべく高階タイヒミュラー空間や超タイヒミュラー空間に研究を広げる。
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