研究課題/領域番号 |
22H01139
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
増田 弘毅 九州大学, 数理学研究院, 教授 (10380669)
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研究分担者 |
廣瀬 慧 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40609806)
小池 祐太 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80745290)
江口 翔一 大阪工業大学, 情報科学部, 講師 (50814018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 確率過程の統計学 / 極限定理 / レヴィノイズ |
研究実績の概要 |
安定レヴィ過程で駆動されるオルンシュタイン・ウーレンベック回帰モデルを提案し、固定期間において高頻度観測される状況下で、局所漸近混合正規性と最尤推定量の最適性を示した。さらに、結果の局所性を回避すべく簡易的に計算できる初期推定量を構成し、安定密度に依存した尤度へ向けたマルチスッテプ推定量の漸近挙動を導出した。本結果の特色としてとくに以下の二点が挙げられる:(1) スケールと安定指数の初期推定量の収束速度が非常に遅い場合でもニュートン・ラフソン型の更新を繰り返すことで漸近有効になることと、(2)更新式における観測情報量の部分をブロック対角型に設定する必要性を理論的に示したこと。本結果により、モデルの特徴量であるトレンド、スケール、安定指数すべてについて漸近有効推定量が構成できたことになる。より一般の非線形局所安定回帰モデリングおよび個体群動態モデリングへの拡張可能性を示唆している。 積分型オルンシュタイン・ウーレンベック過程をシステムノイズとする混合効果モデルにおいて、個体数が増加するときの最尤推定量の漸近有効性を示した。数値実験をつうじて、個体ごとに低頻度観測時点およびその数が異なるアンバランス観測の場合にも推定がうまくいくことを確認した。また、一般化双曲型分布に基づく非ガウス混合効果モデルを提案しその最適推定量を構成した。本結果により、数値最適化と数値積分の二重計算負荷を回避しつつ漸近有効推定が可能となった。これらの論文はarXivへ掲載済みで、現在投稿中である。 因子分析において有用な構造最適化である "Prenet正則化法" の理論的な性質、微調整係数の選択による影響、さらに最適化アルゴリズムを詳細に提示した。本結果は、従属性構造をもつレヴィ駆動型モデルへの展開の足掛かりとなるものである。また高次元対数凸モデルにおいて、正規近似の誤差評価オーダーが導出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は複数の項目に着手し並行して進めた。年度内に発表が決まった論文3件の他、動的混合効果モデリングに関するプレプリントが2本出ているが、それ以外に複数の内容が同時進行中である。とくに、共同研究者との間で正規型擬似尤度解析の非エルゴード的ロバスト化に関する研究が進んでいる。すでに大規模な数値実験を実施しており、提案予定手法の有用性および解釈の容易さが確保できている状態である。また、積分型レヴィ・オルンシュタイン・ウーレンベック過程で駆動される混合効果モデリングについて擬似尤度解析および情報量規準の構成に関する結果が得られており、共著者がすでに国内学会で発表している(2022年9月5日)。また、微小時間の確率構造が複雑なステューデントレヴィ型回帰モデルの推測および局所安定型確率微分方程式モデルのノイズ推定、さらに確率過程に基づく混合効果モデリングについても国際共同研究 (Lorenzo Mercuri, Maud Delattre) が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、現在進行中の内容を詰めて論文へまとめてゆく。上記のとおり軌道に乗っている内容が複数あり、それらは2023年度中に投稿できる見込みである。正規型擬似尤度解析のロバスト化については、エルゴード的な場合の方がむしろ解析的にむずかしそうな印象があるが、こちらも併せて着手する。局所安定型擬似尤度の一様裾確率評価も課題であるが、変動指数の取り扱いが厄介で非標準的な状況になることがわかっている。まずはエルゴード的な場合から状況を明らかにしてゆきたい。非線形局所安定型確率微分方程式モデルのトレンド項の絶対偏差推定についても国際共同研究 (Alexei Kulik) を詰め、論文へまとめて投稿する。さらに正則化法とその最適化アルゴリズムの構築、また高次元確率微分方程式モデルの推定と応用について、共同研究者間で連携して基礎研究を推進してゆく予定である。
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