研究課題/領域番号 |
22H01142
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10242033)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 熱平衡状態 / 熱力学 / 量子力学 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,物質の平衡状態を扱うので,なによりもまず,外場などにより非平衡状態にあったマクロ系が,広く実験で観察されるように,さして長くない有限の時間内に,熱平衡状態に緩和することが必要である.さらに,緩和して実現した状態が,単なる定常状態ではなく,熱力学と整合する熱平衡状態でなければならない.つまり,シュレディンガー方程式に従って時間発展させた量子力学での値が,熱力学で計算したマクロ物理量の値と一致する必要がある. そこでまず,これらが満たされるための条件を明らかにした.この種の条件は,従来は,ほとんどが,示したいことの言い換えになっていたのだが,本研究では,線形非平衡の範囲内ではあるが,はじめて,極めて単純な形の必要十分条件を与えることに成功した.それは,たった1つのマクロ物理量の値が熱力学と整合する平衡値に緩和することが,他のあらゆるマクロ物理量の値も熱力学と整合する平衡値に緩和することの必要十分条件である,という厳密な結果(定理)である. この成果を発表し議論するために,国際会議に参加する予定だったが,そのための有力候補である大きな国際会議が,コロナのため主催者の判断で延期となり,2022年に開催される予定の回が2023年開催に変更された.そこで,この会議に参加するための海外渡航旅費を繰り越し,無事に招待講演と,共著者である大学院生(当時)の一般講演を行うことができた.さらに,この研究成果と論文としてまとめて専門誌に投稿した. これにより,本研究課題のための基盤を作ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のための基盤となる,量子力学と熱力学の整合性を保証する,強力な結果を得ることができた. その結果とは,外場などにより非平衡状態にあったマクロ系が,広く実験で観察されるように,さして長くない有限の時間内に,熱平衡状態に緩和することとと,緩和して実現した状態が,単なる定常状態ではなく,熱力学と整合する熱平衡状態であるための,必要十分条件である.つまり,シュレディンガー方程式に従って時間発展させた量子力学での値が,熱力学で計算したマクロ物理量の値に緩和していくための必要十分条件である. この種の条件は,従来は,ほとんどが,示したいことの言い換えになっていたのだが,本研究では,線形非平衡の範囲内ではあるが,はじめて,実験で直接確認できる単純な形の必要十分条件を与えることに成功した.それは,たった1つのマクロ物理量の値が熱力学と整合する平衡値に緩和することが,他のあらゆるマクロ物理量の値も熱力学と整合する平衡値に緩和することの必要十分条件である,という厳密な結果(定理)である. この成果を発表し議論するために,国際会議に参加する予定だったが,そのための有力候補である大きな国際会議が,コロナのため主催者の判断で延期となり,2022年に開催される予定の回が2023年開催に変更された.そこで,この会議に参加するための海外渡航旅費を繰り越し,無事に招待講演と,共著者である大学院生(当時)の一般講演を行うことができた.さらに,この研究成果と論文としてまとめて専門誌に投稿した.これにより,本研究課題のための基盤を作ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた成果を着実に研究論文として発表することを,まず最優先にする. 次いで,量子系の相共存状態の解明に必要不可欠な,非可換性による問題を解決する論文を発表する.それにより,本研究課題の中心的な目標である,任意の多成分系の相共存状態を分析するための基盤を作ることができる予定である. さらに,これまでの研究成果を取り込んだ最新の量子統計力学の新しい教科書の執筆も開始する予定である.
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