研究課題
バルク光起電力効果（光ガルバノ効果）は、空間反転対称性の破れた結晶に光を照射したときに、直流電場の印加なしに分極電流が生じる非線形光学効果である。この分極電流は結晶内をバイアス電圧なしに伝播することが知られているが、そのメカニズムは知られていない。バルク光起電力効果によって光エネルギーから電流を取り出す効率の向上を図るために、結晶内の分極電流伝播を時間分解イメージングすることを目的とする。本年度は、強誘電体LiNbO3（zカット）単結晶基板に直線偏光フェムト秒光パルスを照射して生じる超高速光電流を、増幅器と高速オシロスコープを用いて観測した。光電流の電流方向と大きさは励起光の偏光に依存し、対称性の議論からバルク光起電力効果（光ガルバノ効果）によって生じたことが確認された。また、照射スポット位置を試料上でスキャンすることで、電流の試料内分布の可視化を行った。一方、フェムト秒レーザーを用いたポンプ・プローブ測定において、プローブ光を集光せずに照射し、CMOSカメラを用いてイメージングすることで、ポンプ光スポット外に伝播した素励起（フォノン・ポラリトン）のダイナミクスに関する情報を時間分解測定した。また数値計算の結果と比較してフォノン・ポラリトンの正常波と異常波の空間伝播を分離した。励起光スポット位置依存性と偏光方位角依存性をとり、バルク光起電力効果とフォノン・ポラリトン生成の関係について議論した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、LiNbO3でバルク光起電力効果とフォノン・ポラリトンの観測に成功した。
LiNbO3におけるバルク光起電力効果とフォノン・ポラリトンの詳細な励起光偏光依存性と、高分解能なイメージングを行い、最終目標である光誘起電流のメカニズム解明に取り組む予定である。光誘起電流（シフト電流・インジェクション電流）を生成するポンプ光偏光依存性は、2次非線形光学効果の光整流（フォノン・ポラリトン）と同一であるため、偏光解析のみからこれらを分離することは難しい。励起スポット位置依存性から空間伝播に関する詳細な情報を得ることができると予想される。さらに光電流のスピン偏極度を検出するための手法開発を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 11件、 招待講演 5件)
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