研究課題/領域番号 |
22H01161
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
川崎 瑛生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40896635)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 精密分光 / 同位体シフト / 未知の相互作用 |
研究実績の概要 |
イッテルビウムの精密分光を用いた未知の相互作用の探索の基盤を築くために、年度初めの段階ではその有用性を理論的に示した論文は存在したものの実験的には観測されていなかった431 nmの狭線幅遷移の探索を行った。このために、まずは431 nmのレーザー系を構築し、狭線幅化、周波数安定化、絶対周波数測定が行える系を確立した。遷移の探索においては磁気光学トラップ内の原子数の減少の特異な動きを探すことが重要であるため、トラップ用のレーザーの強度の安定化を含めたトラップの安定的な運用の方法を確立したうえで探索を行った。また、431 nmのレーザーが原子にあたっていることが確信できるような光学系並びにシークエンスも開発した。その結果、171Ybにおいて431 nmの狭線幅遷移の観測に成功した。この後磁気光学トラップを短時間切った状態で分光を行う方式を用いてその絶対周波数を10 kHz未満の不確かさで測定した。また、g factorや超微細構造といった磁気的性質についても測定した。これらの結果をまとめた論文を投稿中である。これに伴って工学系の改良などを行って次の実験に備えている。 電子と中性子の間に働く未知の力を媒介する粒子の探索のためにはイッテルビウム原子の電子構造に関する理論的な計算が必要となる。これについて、比較的小規模な計算でどの程度の精度が出るかについて検証した。 また、同位体シフト測定のためのレーザー系の構築並びに同位体シフト測定の際のプロトコルについても確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初段階では最初の1年程度で遷移を観測したいと期待していた。装置の故障、納入の遅れなどのサイエンスとは無関係の困難はあったものの、実験自体は一度始めれば比較的コンスタントに進めることができて未観測の遷移を観測するという大きな目標を期待通りの期間で達成することができた。 探索には時間がかかり、装置を長時間連続運転することとなったが、それにともなう経年変化なども観測されず、今後の安定運用に向けても支障はないと思われる。 イッテルビウム原子の電子構造の計算に関しても小規模な計算の範囲内ではまずまずの結果が出ており、進捗を心配しなければならないような状況にはなく、順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画通りまだ発表されていない同位体シフトの測定並びにそれを用いた未知の力を媒介する粒子の探索のための理論計算を行う。理論計算は現在のものよりも大規模に行って精度を向上させる。これにより、1 kHz程度の精度のデータを用いた未知の粒子の探索に関する知見が得られるはずである。それが終わったら魔法波長で原子をトラップし、その波長を精密に測定して1 Hzのオーダーの精密分光への道筋をつける。
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