研究実績の概要 |
昨年度に観測、絶対周波数の測定を行ったイッテルビウム(Yb)の431 nm遷移を他の同位体についても探索、絶対周波数の測定を行った。その結果、170,172,173,174,176Ybの各同位体について当該遷移を観測し、絶対周波数を10 kHz程度の精度で測定することに成功した。また、173Ybに関してはg factorの測定も行った。 このデータを用いて、まず173Ybのhyperfine constantsに関する考察を行った。このデータを用いて原子核の荷電半径や電子と中性子の間に働く未知の力の探索を行うべく、Ybの電子構造について理論計算を行った。この結果と同位体シフトのデータを用いて荷電半径の差を計算した。また、さらにキングプロットの非線形性を利用することによって未知の力を媒介するボソンの存在領域に対して制限をつけた。奇数質量数の同位体に関してなぜキングプロットにおいて偶数同位体の大まかな線形性から大きく外れたところにデータが現れるのかについて、一定の考察も行なった。 さらに絶対周波数測定の精度を高めるために、光格子に原子をトラップする準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イッテルビウムの精密分光を用いた新物理の探索の基盤を築くために、本研究課題の開始時点では理論的な予測は存在したものの実験的には観測されていなかった431 nmの狭線幅遷移の探索を行った。その結果、まず171Ybにおいて431 nmの狭線幅遷移の観測に成功した。そして、絶対周波数を10 kHz未満の不確かさで測定した。この探索を他の同位体についても行い、170,172,173,174,176Ybの各同位体について当該遷移を観測し、絶対周波数を10 kHz程度の精度で測定した。また、171,173Ybに関してはg factorや超微細構造といった磁気的性質についても測定した。 このデータを用いて種々の理論的な解析を行なった。本測定によるデータのみを用いたものとしてはhyperfine constantsを計算した。さらなる解析のためにYbの電子構造について理論計算を行い、これと本測定のデータ、他の報告のデータを合わせることによって原子核の荷電半径の差を計算した。さらに、キングプロットの非線形性を利用することによって未知の力を媒介するボソンの存在領域に対して制限をつけた。 さらに絶対周波数測定の精度を高めるために、光格子に原子をトラップする準備を進めた。 理論計算は当初の想定よりも早い段階で一つの結論に到達した。また、絶対周波数の測定は一度1つの同位体での測定が終わるとそれ以外の同位体に関しては予想の値をうまく計算することによって極めて迅速に探索を行うことができ、想定よりも早いペースで実験が進んだ。
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