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2023 年度 実績報告書

イッテルビウムの精密分光を用いた暗黒物質探索

研究課題

研究課題/領域番号 22H01161
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

川崎 瑛生  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (40896635)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード精密分光 / 同位体シフト / 未知の相互作用 / 原子核の荷電半径 / 他電子原子の電子構造
研究実績の概要

昨年度に観測、絶対周波数の測定を行ったイッテルビウム(Yb)の431 nm遷移を他の同位体についても探索、絶対周波数の測定を行った。その結果、170,172,173,174,176Ybの各同位体について当該遷移を観測し、絶対周波数を10 kHz程度の精度で測定することに成功した。また、173Ybに関してはg factorの測定も行った。
このデータを用いて、まず173Ybのhyperfine constantsに関する考察を行った。このデータを用いて原子核の荷電半径や電子と中性子の間に働く未知の力の探索を行うべく、Ybの電子構造について理論計算を行った。この結果と同位体シフトのデータを用いて荷電半径の差を計算した。また、さらにキングプロットの非線形性を利用することによって未知の力を媒介するボソンの存在領域に対して制限をつけた。奇数質量数の同位体に関してなぜキングプロットにおいて偶数同位体の大まかな線形性から大きく外れたところにデータが現れるのかについて、一定の考察も行なった。
さらに絶対周波数測定の精度を高めるために、光格子に原子をトラップする準備を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

イッテルビウムの精密分光を用いた新物理の探索の基盤を築くために、本研究課題の開始時点では理論的な予測は存在したものの実験的には観測されていなかった431 nmの狭線幅遷移の探索を行った。その結果、まず171Ybにおいて431 nmの狭線幅遷移の観測に成功した。そして、絶対周波数を10 kHz未満の不確かさで測定した。この探索を他の同位体についても行い、170,172,173,174,176Ybの各同位体について当該遷移を観測し、絶対周波数を10 kHz程度の精度で測定した。また、171,173Ybに関してはg factorや超微細構造といった磁気的性質についても測定した。
このデータを用いて種々の理論的な解析を行なった。本測定によるデータのみを用いたものとしてはhyperfine constantsを計算した。さらなる解析のためにYbの電子構造について理論計算を行い、これと本測定のデータ、他の報告のデータを合わせることによって原子核の荷電半径の差を計算した。さらに、キングプロットの非線形性を利用することによって未知の力を媒介するボソンの存在領域に対して制限をつけた。
さらに絶対周波数測定の精度を高めるために、光格子に原子をトラップする準備を進めた。
理論計算は当初の想定よりも早い段階で一つの結論に到達した。また、絶対周波数の測定は一度1つの同位体での測定が終わるとそれ以外の同位体に関しては予想の値をうまく計算することによって極めて迅速に探索を行うことができ、想定よりも早いペースで実験が進んだ。

今後の研究の推進方策

今後は原子を光格子にトラップし、魔法波長の精密測定と絶対周波数測定の精度の向上を行う。本研究課題の残り研究期間は1年なので、この間に大幅な精度向上が果たせるかどうかは精度を上げて行った時に出てくる種々の周波数シフト並びにその不確かさの大きさ、環境の影響などに対する装置の安定性によるのでそのような要素を測定しつつ精度を向上させていくことになる。最終的にはUTC(NMIJ)やセシウムないしYbの原子時計との周波数を基準にして絶対周波数測定を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Observation of the 4f146s2-1S04f135d6s2(J=2) clock transition at 431 nm in 171Yb2023

    • 著者名/発表者名
      Akio Kawasaki Takumi Kobayashi Akiko Nishiyama Takehiko Tanabe and Masami Yasuda
    • 雑誌名

      Physical Review A

      巻: 107 ページ: L060801

    • DOI

      10.1103/PhysRevA.107.L060801

    • 査読あり
  • [学会発表] Nuclear and particle physics with cold ytterbium and Rydberg atoms2024

    • 著者名/発表者名
      Akio Kawasaki
    • 学会等名
      The 15th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2024)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 冷却原子を用いた素粒子・宇宙物理的探索2024

    • 著者名/発表者名
      Akio Kawasaki
    • 学会等名
      素粒子・宇宙・重力と量子センシング 第1回「原子干渉計と重力波観測」
    • 招待講演
  • [学会発表] Nuclear and particle physics with cold ytterbium and Rydberg atoms2024

    • 著者名/発表者名
      Akio Kawasaki Takumi Kobayashi Akiko Nishiyama Takehiko Tanabe Masami Yasuda
    • 学会等名
      Workshop on Frontier of two-electron atoms and cavity QED
    • 国際学会
  • [学会発表] 精密分光を用いた素粒子物理的探索2023

    • 著者名/発表者名
      Akio Kawasaki
    • 学会等名
      第5回アトムの会
    • 招待講演
  • [学会発表] Observation of the 4f146s2 1S0-4f135d6s2(J=2) transition at 431 nm in ytterbium2023

    • 著者名/発表者名
      Akio Kawasaki
    • 学会等名
      54th Annual Meeting of the APS Division of Atomic Molecular and Optical Physics
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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