研究課題/領域番号 |
22H01171
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
古川 信夫 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00238669)
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研究分担者 |
丸山 勲 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (20422339)
上田 宏 大阪大学, 量子情報・量子生命研究センター, 准教授 (40632758)
山本 大輔 日本大学, 文理学部, 准教授 (80603505)
宮原 慎 福岡大学, 理学部, 教授 (90365015)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジカル磁気構造 / 磁気光学応答 / 量子もつれ / テンソルネットワーク法 / スピン軌道相互作用 |
研究実績の概要 |
微視的なトロイダルモーメントの理論の研究を進めている。トロイダルモーメントは反強磁性体SSH模型で量子化することを確認した。また、反強磁性体のRice-Mele模型を構成し、電気磁気効果の応答係数とトロイダルモーメントの関係を調べた。 高い連続対称性を持つ2次元スピン模型において、特異な熱揺らぎによる秩序化現象によって有限温度相転移が起こることを数値的に示した。また、量子磁性体CsFeCl3において高圧・強磁場で観測されたメタ磁性転移について、強磁場で重要となる2状態(Jz=1とJz=2)をスピンS=1/2とした有効スピン模型を、2次摂動理論を元に作成することができた。 双一次・双二次相互作用の競合により、量子スピン状態と強磁性が共存する量子強磁性相が存在することを示した。例えば、直交ダイマー鎖双一次・双二次相互作用模型では、反強磁性ハルデン鎖の拡張となる強磁性ハルデン状態が実現することが分かった。強磁性ハルデン相は、トポロジカル磁性体のバルクの新たな候補であり、強磁性体と量子スピン状態の共存による特異な励起の存在が期待される。 2021 年に公開した量子スピンシミュレータQS3の機能拡張と更新版の公開を実施した。具体的には、混合スピン系・超格子系、粒子数非保存系(粒子数カットオフ付きソフトコアボソン系)への応用や、粒子数が希薄でなくなった際の高速化手続きを実装した。対応するスピン系のハミルトニアンも2次までのスピン演算子の項はすべて導入できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であるトポロジカル磁性体における電気磁気効果に関しての研究が進む一方で、トロイダルモーメントなどの新たな電気磁気効果に関する現象や、トポロジカル磁性を示す新奇な模型の開拓などが並列して進んでおり、さらにこれらの系の大規模数値計算を行うための量子スピンシミュレータの開発も行った。
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今後の研究の推進方策 |
反強磁性体のRice-Mele模型や他のスピン模型でトロイダルモーメントを計算し、電気磁気効果の量子化が起きる条件を調べる。 ダイマー・シングレット状態からカイラル液体状態への圧力誘起相転移が期待されている量子磁性体CsFeCl3に対し、これまでの研究で作成できた有効スピン模型を数値的に解析することで、実験で観測されているメタ磁性転移の発現機構を解明する。 強磁性ハルデン鎖における動的電気磁気応答について研究を進める。通常の反強磁性ハルデン鎖では磁気活性モードは存在しないが、強磁性ハルデン鎖では、強磁性成分のために磁気活性なモードが存在する可能性があり、スピン流機構などによる電場活性モードを考慮することで、動的電気磁気応答の発現が期待される。 直交ダイマー系やハルデン系に磁気異方性や外場印加の効果を取り入れることで、動的電気磁気効果の解明を目指す。 研究実績概要に示した高度化された量子スピンシミュレータQS3を活用して、強い磁場下にある量子相の解析やその新しい同定法の提案を行う。
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