研究課題/領域番号 |
22H01177
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤岡 淳 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80609488)
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研究分担者 |
辻本 吉廣 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (50584075)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / トポロジカル半金属 / 異常ホール効果 |
研究実績の概要 |
電子相関効果でバンド幅の繰り込みが生じた強相関ディラック半金属ペロブスカイト型CaIrO3における磁場中の電気伝導特性評価も行った。超高圧合成法によって合成したペロブスカイト型のCaIrO3の単結晶試料において東京大学物性研究所国際強磁場施設において低温・パルス強磁場中における磁気輸送特性の測定を行った。磁場を直方晶のa軸に印加した場合とc軸に印加した場合で量子極限における抵抗率に磁場方位依存性が生じる事が観測された。数値計算によるランダウレベルの計算結果とも合わせ、Ir5d軌道のホッピングの異方性によって量子極限における電子状態に顕著な磁場方位依存性が生じている可能性が高いことを明らかにした。 また層状反強磁性体SrCo6O11の単結晶をキュービックアンビル型超高圧装置を用いて合成した。本系はカゴメ格子の伝導層と三角格子の磁性層が交互に積層した一種のカゴメ磁性体である。カゴメ磁性体はワイル半金属状態が生じる候補物質の一つであり、本年度はその可能性を探るためホール効果、磁気抵抗率の測定を行った。その結果、低温では磁化にスケールする異常ホール効果が見られた。異常ホール伝導度と電気伝導度のスケール則の観点から内因性機構の可能性が高いことを明らかにした。他方、転移温度近傍およびその高温側では磁化にスケールしない異常ホール効果が顕著に見られた。その大きさは転移温度近傍では磁化に比例する従来の異常ホール効果より圧倒的に大きく、スピンが完全偏極しない磁場領域で特に顕著になる様子が観測され、非従来型の機構である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペロブスカイト型CaIrO3では磁場方位依存性が顕著に見られ、定性的には直方晶の対称性から予想される異方的な振る舞いと一致していた。しかし、その起源は、既報の理論で予測されている異方的磁場誘起トポロジカル転移とは異なり、Ir 5d軌道のホッピングの異方性に由来するという新しい可能性がある事を見出した。量子極限状態においてd電子の軌道の異方性に由来する電子状態及び輸送現象が顕著に見えた点で予想外の進捗と言える。また層状反強磁性体SrCo6O11では当初の計画通り単結晶合成が進み、ワイル電子によると思われる異常ホール効果の検出が出来ている。また、スピンの揺らぎによる大きな異常ホール効果も見られている点で当初の計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
層状反強磁性体SrCo6O11で見られたスピン揺らぎによる異常ホール効果の起源を明らかにすることを目指す。特に元素置換等で格子歪みや乱れの大きさを制御し、異常ホール効果についてさらに知見を得ることを目指す。
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