研究課題/領域番号 |
22H01190
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
長屋 智之 大分大学, 理工学部, 教授 (00228058)
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研究分担者 |
折原 宏 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30177307)
小林 史明 九州大学, 理学研究院, 助教 (30898101)
氏家 誠司 大分大学, 理工学部, 教授 (40185004)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | レオロジー / 液晶電気対流 |
研究実績の概要 |
パターン電極を用いた平均流の成長とゆらぎの解析:フォトリソグラフィーの技術を使ってガラス板上の均一な透明電極のスパッタ膜の一部をエッチングにより除去し,1mm×1mm,3mm×3mmの正方形の領域のみに電場を掛けられる液晶セルを作成した。電圧を変えて平均流の大きさ,方向の時間発展を測定した。印加周波数が50Hz程度の低周波の場合,平均流の大きさは電場の2乗に応じて増加した。また,2kHz程度の高周波の場合は,液晶対流は発現しないので,自発流れもない。正方形領域が1mm×1mmの場合,局所的な平均流が時間と共に領域全体に渡る大きな回転流になったが,3mm×3mmの場合にはこのような現象は観測されなかった。 平均流の並列処理画像解析ソフトの作成:計画通り従来のプログラムをマルチスレッド化することができた。従来の平均流の解析プログラムは,データ解析ソフトのIgor Proのマクロ機能を用いていた。観測画像を14×14の小画像に分割し,各々の画像の各時刻とその次の時刻で2次元相互相関関数をフーリエ変換を利用して計算し,相互相関関数の最小値をとる座標の原点からのずれが平均流となる。Igorの関数を利用して比較的容易に計算ができたが,一つの画像に対して約30分程度かかった。そこで,Igorのユーザー組み込み関数機能を利用して,C++のマルチスレッドプログラムを作成し,同じ計算を5倍以上の速さで行えるようにした。 シッフ塩基系液晶での自発流れ(負の粘性)の解析 :従来行われていたMBBA液晶,EBBA液晶に加えて,PBBA液晶とBBBA液晶のせん断速度とせん断応力の関係を実験的に調べた。PBBA液晶,BBBA液晶においても自発流れは存在したが,その大きさはMBBA液晶,EBBA液晶よりも小さかった。最も自発流れが大きいのはEBBA液晶であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究立案当初は,分担者の小林は代表者と同じ研究機関に所属することを想定していたが,令和4年4月に東京大学理学部に移籍し,その後,同年10月に九州大学理学部に移籍した。共同研究を続ける意思があったので引き続き分担者となってもらったが,実験を行うための環境整備に時間を要したため,予定していたシッフ塩基系液晶での自発流れの実験は十分に行えなかった。そのため,「やや遅れている」という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
平均流の成長過程の解析:令和4年度の研究において平均流の時間変化を計測する並列処理画像解析ソフトが完成したので,これを用いて平均流の成長過程を計測する。対象とする液晶は,MBBA,EBBA,PBBA,BBBAなどのシッフ塩基系の液晶である。PBBA,BBAA液晶は市販していないため,合成を行う。この実験は,帯状の透明電極を交差させた液晶セルを使用する。平均流の成長は電極の幅に依存すると考えられるので,数多くの種類の液晶セルを作成して実験を行う。 平均流の大きさの有色ノイズ依存性の実験:通常の液晶セルを使った液晶電気対流の実験では,低周波の交流に有色ノイズを重畳して液晶に印加すると,電気対流発生のしきい値電圧と発生するパターンが変わることがわかっている。そこで,有色ノイズを印加した場合の平均流の大きさを実験的に系統的に調べる。使用する有色ノイズとしては,オルンシュタイン・ウーレンベックノイズと二値ノイズを用いる。ノイズの相関時間を変えて誘起される平均流の大きさをレオメーターで計測する。数多くの条件でこの計測を行うため,まず自動実験環境を構築する。 理論モデルによる数値シュミレーション:実験だけでは自発的な平均流の発生現象の本質を理解することは難しいため,この実験系に相当する理論モデルを作成し,3次元数値シミュレ ーションを試みる。液晶の配向状態はテンソル秩序変数で記載し,オンサーガーの変分原理から液晶の流体力学の基本方程式を導き,その式とマックスウェル方程式と連立して数値的に解く。数値的解法としては,有限要素法を使用する。
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