研究課題/領域番号 |
22H01192
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
和田 浩史 立命館大学, 理工学部, 教授 (50456753)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セル構造体 / メタプレート / メカニカルメタマテリアル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、セル構造体からなる弾性プレート(以降、これをメタプレートと呼ぶ)の力学特性を、理論と実験の両面から特徴付けることである。初年度である22年度は、申請書の研究計画に沿って、規則的な正方格子構造をもつ弾性プレートについて、詳細な研究を実施した。 3Dプリンタなどのデジタルファブリケーションを活用し、さまざまな幾何パラメータ(サイズや部材の厚みなど)をもつサンプルを多数作成した。3点曲げ試験を初めとする材料力学的計測を実施し、一軸方向に曲げを印加するとそれと直交する方向に大きな背反曲率が形成されることを確認した。さらに、系統的な測定によって、プレートに生じるガウス曲率の大きさ(およびそれに比例する面外ポアソン比)が、セルプレートの「詰まり具合」を表す相対密度にどのように依存するかを実験的に明らかにした。 次にAbaqusをもちいた有限要素シミュレーションを実施し、実験結果と定量的に一致する計算結果を得た。実験ではアクセスできないパラメータ領域を含むさらに広いパラメータ空間を探索し、実験結果が広いパラメータ領域において正しいことを確認した。 最後に、セル構造を均一化した有効弾性論のアプローチにもとづき、Lambの理論をメタプレートに拡張し、上記の実験およびシミュレーション結果を定量的に説明するスケーリング理論を構築した。このスケーリング則は、背反曲率が観測されるプレートのサイズが、セル構造の相対密度の平方根に反比例することを予測する。したがって、このスケーリング理論は、なぜスカスカのセル構造体ほど大きいサイズまで背反曲率を示すのか、についての直接的な説明を与えてくれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載のとおり、初年度の研究は、およそ申請書で提案したとおりに進めることができた。研究成果の出版は今年度の課題であるが、データはすべて取り終えており、現在、論文原稿を準備中である。当初予定していなかったような大きな技術的問題にも直面していない。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、基本的には研究計画書に沿って研究を推進する。と同時に、研究開始時から現在までに得た新しい知見を生かして、今後の研究をさらに新しい方向へも展開する。例えば、正方格子に対角線を一本だけ追加した周期格子系を考える。このような格子は、剪断変形に対して左右非対称な力学応答を示すと期待できる。なぜならば、ボンドが追加された対角線が引き延ばされるように剪断をうけるときは大きな剛性を示すが、このボンドが圧縮をうけるように剪断されるときは、構造が薄いため容易に座屈して復元力をほとんど示さないと期待されるからである。このように、セルの単位構造を工夫することで、マクロなスケールにおいて、自然には存在しない形状変形や力学応答を示すメタプレートを創製することを目的として研究を実施する。 研究の進め方としては、初年度に引き続き、3Dプリンタを使った模型の作成、物理実験、有限要素解析によるシミュレーションを組み合わせる。同時に、線形弾性論にもとづく理論解析を発展させ、実験および数値実験のデータを定量的に説明する。
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