研究課題
磁場やプラズマのエネルギーの変換器として様々な現象で本質的な役割を担う無衝突衝撃波や磁気リコネクションは、宇宙空間や実験室プラズマ中に普遍的に存在する磁気流体(MHD)的なマクロな現象である。その構造はMHD的に理解できるが、衝撃波の遷移層での散逸やリコネクションのトリガー機構、さらに非熱粒子の加速については、ミクロな物理が支配していると考えられている。本研究では、特に電子ダイナミクスに 着目し、非平衡プラズマ中のマクロ構造を支配するミクロな物理を、パワーレーザーを用いて実験的に研究する。2023年度は、電子スケールの磁気リコネクションに関するReview論文を、Editorの依頼でSpringer Nature社の国際誌、Reviews of Modern Plasma Physicsに発表した。また、実験室における電子スケールの磁気リコネクション研究の最後のピースとして取り組んでいるレーザープラズマ中の電磁場の3次元のベクトル計測を行うため、固体飛跡検出器と機械学習を用いたイオンラジオグラフ計測を開発している。このため、イオンビーム生成のためのレーザーイオン加速と固体飛跡を用いたイオン計測、さらにここに機械学習を取り入れ、膨大な数のイオン飛跡を自動認識する手法を開発し、計測の専門誌に発表した。さらに、AIを用いた高エネルギーイオン加速の最適化や電磁場の再構築について数本の学術論文と内外の会議での成果発表をおこなった。2023年度の実験は、阪大レーザー研のパワーレーザーGXIIレーザーを用いプラズマを生成し、磁場構造計測のためのイオンビームを高強度レーザーLFEXを用いて生成し、レーザープラズマ中の電磁場のイオンラジオグラフ計測を行った。2022年度の複雑な磁場構造を理解するため、セットアップをシンプルに対向流プラズマ中の不安定性の計測に切り替え、電磁場の再構築が可能か試みている。
2: おおむね順調に進展している
今年度もLFEXとGXIIを同時に用いるマシンタイムが採択されたため、実験セットアップをシンプルに対向プラズマ流の生成に変更し、不安定性起源の電磁場乱流の計測を行った。LFEXレーザーを用いたイオンビーム生成は実績のある独自開発のlarge-area susupended graphene (LSG)をターゲットとして用い、非相対論強度までLFEXをデフォーカスし、比較的大きな(~1 cm)視野を確保した。イオン検出器にはこれも独自技術である複数の固体飛跡をスタックで用いた。今年度は、不安定性を対向流を作るレーザーのエネルギーを非対称にすることでコントロールし、不安定性起源の波動の計測を行った。同時に、電磁場の再構築は固体飛跡をイオン計測器に用い、AIを用いて自動認識した膨大なイオンピットの情報を用いる。まずは単純な電場や磁場の重ね合わせを用いて、イオンの散乱問題を学習データとし、AIを導入し逆問題を解くことで電磁場の再構築を行った。これまで難しかったベクトル電場と磁場の分離が2次元においては問題なく行えることがわかった。
今後は、イオンラジオグラフに用いた固体飛跡のイオンピットの情報から、機械学習を導入してイオンビーム中のイオン一つ一つのエネルギーと位置情報を求め、さらにその膨大なデータを用い電磁場のまずは2次元の再構築を行う予定である。準問題を数値的に解き、逆問題の学習データとして用いる。手始めに輻射流体コードと流体コードを用いた不安定性のシミュレーションデータから電場を仮定し、ここにテスト粒子を導入し数値的なイオンラジオグラフを求める。既知の電場による散乱問題を学習データにニューラルネットワークを用いて逆散乱問題を解く。さらに、輻射磁気流体コードと磁気流体コードを用いた乱流磁場構造についても同様の手法で場の再構築を試みる。最終的には電場と磁場が混在する系、および3次元に一般化する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (51件) (うち国際学会 24件、 招待講演 8件)
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