研究課題/領域番号 |
22H01197
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三浦 永祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (10358070)
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研究分担者 |
田中 真人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (30386643)
山崎 淳 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10436537)
大塚 崇光 宇都宮大学, 工学部, 助教 (30815709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レーザー加速 / 円偏光レーザー / 円偏光フェムト秒軟X線パルス / X線磁気円二色性測定 |
研究実績の概要 |
超短パルス高強度レーザーとプラズマの相互作用を利用した電子加速であるレーザー加速では、加速電子群はレーザーとの相互作用により振動し、放射光の様に空間指向性の高いX線(ベータトロンX線)が同時に発生する。本研究では、磁性体の分析、評価を可能とする光子エネルギーが1 keV近傍の円偏光軟X線パルスを得るため、円偏光レーザーを用いたレーザー加速により円偏光のベータトロン軟X線パルスを発生する手法を提案し、その実証を目的としている。 2023年度は円偏光ベータトロンX線発生を実証するためのX線磁気円二色性(XMCD)測定系の設計と構築を進めた。XMCD測定では磁性体試料に印加する磁場を反転させて取得した2つの吸収スペクトルから、吸収差分を得てL2、L3吸収端での吸収率の増減が反転するXMCDスペクトルが得られることを検証する。ベータトロンX線をトロイダルミラーで集光して磁性体薄膜試料に照射し、それを透過するX線スペクトルを観測する分光器の光学系を設計した。RbAP結晶を分光素子として用いて、コバルトのL2、L3の2つの吸収端をエネルギー分解して同時に観測できる光学系を構築できた。予想されるベータトロンX線収量、光学系と検出器の検出効率から、X線スペクトルの取得には数100ショットの重ね撮りが必要と見積もられた。X線を1 Hzの繰り返しで発生させることが可能であるので、1データ取得ための測定時間は5分程度と見積もられ、やや長いが現実的な時間で測定ができることもわかった。また、測定用試料として用いるコバルト薄膜を試作した。 一方で、上述のXMCD測定系構築のためには、レーザー照射系、電子線特性を評価する電子エネルギー分析装置も含めレーザー電子加速のための配置を大幅に変更する必要があり、その構築も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
XMCD測定系の設計と構築に時間を要した、レーザー電子加速の配置を大幅に変更した、レーザー装置の増幅器結晶のダメージが発生しその修復に時間を要したため、主たる課題であるレーザー電子加速実験では進展が少なかった。そのため、2023年度に予定していた円偏光レーザーを用いたレーザー電子加速実験は実施できていない。XMCD測定系の構築、磁性体試料の試作を当初計画よりも前倒しで実施できたが、電子加速実験では当初計画に対して遅れがあり、進捗状況はやや遅れていると評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は円偏光軟X線パルス発生を実証することを目指す。円偏光レーザーを用いたレーザー電子加速実験を行い、高エネルギー電子線を発生し、同時に得られるベータトロンX線のエネルギー分布、収量等の特性を評価する。レーザーエネルギー、プラズマの電子密度、ガスジェット長、ガス種により電子線の特性を制御し、コバルトのL吸収端がある800 eV近傍のX線収量を増強できる条件を明らかにする。 円偏光レーザーを用いたレーザー電子加速で発生するベータトロン軟X線を用い、コバルト薄膜を用いたXMCD測定を行う。XMCD測定の際にコバルト薄膜に印加する磁場方向を反転することにより、L2、L3吸収端での吸収率の増減が反転するXMCDスペクトルを得、円偏光軟X線発生の実証を目指す。
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