研究課題/領域番号 |
22H01199
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
原 正憲 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (00334714)
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研究分担者 |
赤丸 悟士 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (10420324)
阿蘇 司 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (30290737)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | トリチウム / β線誘起X線 / 定量分析 |
研究実績の概要 |
トリチウムにより汚染された装置を安全に管理するためには装置を構成する材料中のトリチウムを定量する必要がある。しかし,現時点では非破壊で固体中のトリチウムを定量測定する方法はない。β線は物質を構成する原子と相互作用をすることにより,X線を発生させる。X線は透過力が強いため,X線の測定により固体中のトリチウムを間接的に測定できる。この方法はβ線誘起X線分光法(BIXS)と呼ばれている。BIXSは現状では固体中トリチウムの定性分析にとどまっている。β線誘起X線スペクトル(BIXスペクトル)の形状は,固体中のトリチウム分布により変化する。BIXスペクトルを高精度に計算することにより,固体中のトリチウム分布を求めることができると考えられる。固体中のトリチウム分布が分かれば,シミュレーションにより装置の計数効率が計算できる。実測の計数率と計算により求めた計数効率より固体中のトリチウムが定量できる。 今年度の研究実績を述べる。トリチウム分布を変化させたときに観測されるBIXスペクトルを計算することで,トリチウムの検出できる深さがどの程度であるかを検討した。その結果,発生する特性X線の強度より50μm程度の深さまでに存在するトリチウムを検出できることが示された。この検出できるトリチウムの深さはトリチウムが存在する固体を構成する元素に依存し,原子番号が大きくなるに従い浅くなることが分かった。また,深さ方向の分解能は,固体を構成する元素の種類が多いほど高いことが分かった。深さ方向の分解能の向上を目指し,シミュレーションプログラムの修正を行った。この中には,計算体系の検出器に不感層による吸収を入れ,不感層の厚さを最適化することも含まれた。これにより,計算スペクトルは実測スペクトルをよく再現することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,高精度でBIXスペクトルをシミュレーションできるプログラムとBIXを測定する装置を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,トリチウムのβ線により誘起され発生するBIXスペクトルのシミュレーションを広く行った。その結果,(1)深さ方向のトリチウム分布の分解能に対する固体元素の影響の知見を得ることができ,(2)X線吸収体として不感層の導入により高精度のスペクトルシミュレーションができるようになった。 今後の予定は,トリチウム含有試料からのBIXスペクトルの取得を進める。トリチウムは固体中を拡散することから,定期的にBIXスペクトルを測定してトリチウム濃度分布の変化に伴うBIXスペクトルの変化を確認する。変化が見られなくなった際のトリチウム分布は,測定範囲内の深さで濃度が一定と考えられる。拡散による濃度プロファイルを仮定し,BIXスペクトルの計算による再現を進める。 シミュレーション上での固体中のトリチウム分布の再現は,トリチウム分布のプロファイルをある厚さで区切りトリチウム濃度のヒストグラムを作り,ヒストグラムのビンごとにスペクトルを計算し結合することで行う予定である。各ビン毎のスペクトルに重み付けをして和をとることで任意のトリチウム分布をもつBIXスペクトルが計算できると考えている。
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