研究課題/領域番号 |
22H01223
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
固武 慶 福岡大学, 理学部, 教授 (20435506)
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研究分担者 |
滝脇 知也 国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 准教授 (50507837)
松本 仁 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (70722247)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / ニュートリノ / 重力波 / マルチメッセンジャー / 輻射輸送 / 磁気流体 / スーパーコンピューティング |
研究実績の概要 |
本年度の成果で、主たるものとして、磁場の効果を含む鉄コアの重力崩壊並びにニュートリノ駆動爆発に至るまでの動的進化を空間三次元の超新星シミュレーションで再現することに成功した成果が挙げられる。従来の研究で、鉄コアが高速自転、強磁場を有しているときには、磁場の巻き込みの効果や磁気流体不安定性などで、鉄コアの回転軸に沿ってジェット状の爆発が起きることが指摘されていた。一方で、そもそも、鉄コアが高速自転、強磁場を有している状況が大質量進化のパスとしては、極めて稀なケースであることも分かってきた。鉄コアが強磁場を持っている場合は、磁場による角運動量の輸送が起こり、一般に鉄コアの自転は、低速になることが指摘されている。そのような研究背景のもと、今年度は、低速回転している鉄コアに磁場をシステマティックに印加したときの、超新星爆発のダイナミクスを研究した。その結果、特に超新星コアにおいて、乱流が駆動するニュートリノ加熱領域において磁気乱流が駆動され、そこでは、磁場が指数関数的に増加することがわかった。このとき、この磁場の増加率が、αΩ効果による磁場の線形成長率と一致することから、磁場増加の物理的な機構も突き止められたのが、この研究の最も重要な点である。 以上の成果に加え、超新星マルチメッセンジャーの文脈で、連星の効果まで含むニュートリノ背景放射に関する定量的予測を行った成果、さらにアキシオンと呼ばれる素粒子が超新星爆発に及ぼす効果をまずは、2次元軸対称の超新星シミュレーションで調べ、さらに、そのマルチメッセンジャーの定量的予測も行い、将来の観測から、逆にアキシオンパラメーターに制限を加えられる可能性についても指摘できた点も新しい成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の開始当初は、いわゆる素粒子の標準モデルの範疇で超新星爆発から放射されるマルチメッセンジャー(ニュートリノ、重力波)予測を行う計画であったが、近年の素粒子理論・実験の進展から、様々なエネルギーレンジにわたって、アキシオンと呼ばれる素粒子が様々な文脈で注目を浴びている。例えば、ダークマターを説明する候補として、さらには、超新星爆発においては、爆発を助ける効果が指摘されている。そのような研究背景のもと、本研究課題においても、アキシオンの効果を取り入れた超新星爆発の研究に着手出来たのが、上記の研究進捗に関する評価になる。研究初年度は、まずは、空間1次元を仮定した理論モデル、本年度は、その結果をアップデートさせ、空間2次元の理論モデルを発表できた。現在は、空間3次元の理論シミュレーションを行っており、予備的な成果が得られつつある。その意味で、当初の予想を超える成果が得られつつあると判断できる。 さらに、超新星の3次元MHDシミュレーションにおいても、親星を系統的に変化させた研究成果が既に得られており、現在論文執筆中である。これまでの先行研究で、最も系統的に親星を変化させた理論研究よりも「更に」、系統的な研究をMHDモデルで調べることに成功している。この点も、上記の現在の研究進捗に対する上の判断基準の一つになっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は以下の3点である。 その1)現在進めている親星の質量を9太陽質量から、25太陽質量まで、最新の親星モデルをもちいた世界で最も系統的な超新星シミュレーション結果を論文としてまとめ、そのマルチメッセンジャーの定量的予測を行うことである。さらに、本年度は、鉄コアの自転も(ただし低速自転に限って)調べ、より系統的な超新星爆発のダイナミクスおよび、マルチメッセンジャーの定量的予測を行う。 その2)先述したアキシオンの効果を含む、空間3次元の超新星シミュレーションを世界に先駆けて行う。近年の超新星爆発理論において、ニュートリノの自己相互作用の効果が特に注目を浴びている、いわゆる、早いニュートリノフレーバー変換(Fast Flavor Conversion; FFC)である。このFFCの効果を、まず、現象論的に3Dの超新星モデリングに導入し、その動的進化に及ぼす効果およびに、マルチメッセンジャーシグナルの予測を行う計画である。 その3)本年度も着目した、大質量星の連星進化の研究をより深化させることが不可欠である。これまでの研究から、大質量星の中で、その6割以上は連星系をなしているとの指摘がある。一方で、これまでの超新星理論は、ほぼすべてが、親星が単独星であることを仮定しており、連星の効果が大質量星進化に及ぼす効果、さらには、爆発メカニズムに及ぼす効果については、未だ未解明である。この点を明らかにするために、まずは、種族合成法(いわゆるpopulation synthesis)の観点からこの点に迫る計画である。
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