研究課題/領域番号 |
22H01230
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 光順 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50218939)
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研究分担者 |
西村 太樹 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (30612147)
田中 聖臣 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (70838143)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アイソマー状態 / 反応断面積 / 核半径 / アイソマー比 / 不安定核 |
研究実績の概要 |
原子核の基底状態と大きく違う構造を持つアイソマー状態は,原子核物理学として大いに興味深い研究対象であるだけでなく,いくつかの核種では宇宙物理学 ( 特に元素合成問題 ) の観点からもその重要性が指摘されている。本研究では,12Beのアイソマー状態について,中性子ハロー構造を持つ可能性を含めてその核半径・核子密度分布測定からその核構造の解明を目標としている。 本研究の当該年度では,理研RIビームファクトリー加速器の不調により新規開発検出器の性能テストが実行できず,研究計画を練り直したが,2023年度も依然として加速器の不調が続いたため,このテストはさらに延期せざるを得ない状況となった。一方で,量子医科学研究所HIMAC加速器施設における実験計画も,研究所都合でビームタイムが大幅に縮小され,思うように実験が進められない状況に追い込まれていた。それでも,研究計画のうち進められる部分をできるだけ進めるべく,研究計画の随時調整を行いながら,すでにデータを持っている16Nアイソマー状態についての解析を進めた。 そして,2023年度はHIMAC施設において利用可能な僅かなビームタイムを利用して,12Beのアイソマー比測定実験を行うことができた。その結果,以前測定に成功していた18O 1次ビームから生成した12Beのアイソマー比に比べて,十分に大きなアイソマー比を13C 1次ビームからの生成で達成することに成功した。この結果を用いることで,アイソマー状態・基底状態を十分分離して核半径を実験により調べることができることになり,その成果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
そもそも,理研RIビームファクトリー加速器施設において,加速器からのビーム取り出し部分に真空漏れが見つかり,かなり大規模な修理工程が組まれたため,予定されていたテスト実験が大幅に遅れた。さらに,同施設の超電導磁石関連の冷凍機故障によりビームタイムが凍結され,研究計画は遅れることとなった。これに加え,利用予定であったもう一方の加速器施設である量子医科学研究所HIMAC加速器施設においても,こちらは研究所都合(電気料金高騰も含む)により大幅にビームタイムが減らされることとなり,計画の遅延を余儀なくされている。
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今後の研究の推進方策 |
量子医科学研究所における実験計画は今後大幅に変更せざるを得なくなる可能性があるが,現状では研究所側にビームタイム縮小方針を変更してもらうべく,ワークショップや日本物理学会での特別シンポジウム開催などに参加・発表を行い,状況を見守っている。 関連して,量子医科学研究所でのビームタイムが縮小されつつも継続される場合を想定して,少ないビームタイムで如何に当初計画した研究成果を挙げられるかの実験方法等の見直し・改良を今後進めていく予定である。 一方で,量子医科学研究所HIMAC加速器施設の代替として,理研RIビームファクトリーが利用可能かどうかの検討も進めていく。理研の施設はもともと利用可能な全ビームタイムが少なく,それに対してユーザー数は国外も含めて極めて多いので,実験頻度を上げることが難しい。本研究は,細かい調整や準備研究が重要な役割を占めているが,その意味で全体の実験計画は理研の施設にはフィットし難いテーマとなっている。それを工夫を重ねることで乗り越えられるかの検討が重要である。
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