研究課題/領域番号 |
22H01233
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
有賀 智子 (古川) 九州大学, 基幹教育院, 助教 (00802208)
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研究分担者 |
六條 宏紀 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任助教 (00725814)
中野 敏行 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50345849)
音野 瑛俊 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 助教 (20648034)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高エネルギーニュートリノ / ニュートリノ反応 / LHC |
研究実績の概要 |
本研究では、欧州原子核研究機構(CERN)に設置されている世界最大のハドロン衝突型加速器LHCを用いて、LHC陽子・陽子衝突に起因する高エネルギーニュートリノ測定を実施している。陽子・陽子衝突点からビーム軸上約480m離れた地下トンネル内にエマルションフィルムを用いたニュートリノ検出器を設置することで、数100GeVから数TeVのニュートリノ反応を各フレーバーについて測定できる。2022年3月に物理ランを開始し、その後のエマルション検出器の運用のために、共同実験者および他実験の使用者とともに国際協力のもとにCERNに暗室ファシリティを構築した。それを活用して、7月と9月にエマルション検出器の入れ換えを実施した。検出器モジュールの組み立てでは、スイスや諸外国の共同研究者と暗室ファシリティにおいて作業を行い、日本グループは2022年の3度の検出器組み立てを主導した。入れ換えで取り出したフィルムは現像後に日本へ輸送し、高速読み出し装置を用いてフィルム全面の読み出しを実施している。ニュートリノ反応の検出および荷電カレント反応で生じるレプトンの識別に取り組み、高エネルギー電子ニュートリノ反応候補の検出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年3月から物理ランとなる実験を開始し、エマルションフィルムは荷電粒子の飛跡を蓄積し続けるため、毎年3回検出器の設置・交換を実施してきた。エマルションフィルムの製造・性能の管理は日本において行っている。製造後のフィルムを高湿度環境(95%, 30℃)に置くことにより長期的なフィルムの性能を向上できることを確認し(リセット処理と呼ぶ)、2022年は名古屋大学の恒温恒湿槽を用いてリセット処理を実施してきた。2023年以降の実験に用いるエマルションフィルムについては九州大学でこの処理を行うため、恒温恒湿槽を購入し、2023年初旬に新たに暗室設備を構築した。2023年2月から九州大学の暗室においてこの処理を実施している。その後CERNへ輸送して暗室にて検出器モジュールを組み立て後、地下トンネルに検出器を設置してビーム照射を行っている。数か月後の入れ換えで取り出してフィルムを現像し、現像後のフィルムを日本へ輸送、高速読み出し装置にて飛跡データの読み出しを行い、九州大学をはじめとする共同研究機関で共有してデータの解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年のCERNでの照射実験の実施と高エネルギーニュートリノ反応の解析を進める。FASERnu検出器は、エマルションフィルムと1mm厚のタングステン板の積層構造の検出器、FASERスペクトロメータとの接続を可能にするためのインターフェースシリコン検出器から成る。本年度のニュートリノ照射実験に向けて、分担者らと名古屋大学にてエマルションフィルムを製造している。製造したフィルムをカットした後、九州大学へ輸送し、新たに構築した暗室ファシリティにて恒温恒湿器を用いたリセット処理により性能の改善と調湿を行ってからCERNへ輸送する。2023年最初のエマルションモジュールは3月にCERNの暗室で組み立てトンネル内に設置した。今後、2023年6月と8月にその取り出しと新たなモジュールの設置を予定している。取り出したフィルムを現像して輸送し、分担者が開発している読み出し装置を用いてフィルム全面の高速読み出しを実施する。読み出したデータに対し、ニュートリノ反応点を再構成する。本年度は、電子ニュートリノ反応およびミューニュートリノ反応を中心とした解析を実施するとともに、タウニュートリノ反応の検出に向けた研究を進める。分担者ら が運用を担当しているFASERスペクトロメータへのインターフェース検出器を用いてミューオンの電荷測定を実施し、正/反ミューニュートリノを識別した測定も行う。
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