研究課題/領域番号 |
22H01234
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
日比野 欣也 神奈川大学, 工学部, 教授 (80260991)
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研究分担者 |
川田 和正 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10401291)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超高エネルギーガンマ線 / 超高エネルギー宇宙線 / ペバトロン天体 / 銀河中心 |
研究実績の概要 |
2024年度から南米ボリビア・チャカルタヤ山中腹(標高4,740m)にシンチレーションカウンター約400台からなる空気シャワー観測装置とバックグランドとなるハドロン空気シャワー除去のための地下ミューオン検出装置からなるALPACA観測計画が始まることになった。そして本研究では、ALPACA観測を補完するためにその観測装置に埋め込むように高密度空気シャワー観測装置(ASアレイ)を建設して、低エネルギー側の10TeV領域ガンマ線の感度を広げ、天の川銀河面に沿って広視野ガンマ線探査を行う予定である。本研究により、10TeV領域の感度まで拡張でき、効率的に10TeVから1,000TeV領域のガンマ線スペクトルを測定できるように考えている。最近の観測では銀河中心方向からの10TeVを越えるガンマ線放射の兆候が報告されており、理論的研究からは銀河中心方向からの100TeV以上高エネルギーガンマ線放射の存在が示唆されている。本研究でも、天の川銀河中心付近に1,000TeVを越える宇宙線陽子を発生および加速する天体(PeVatron)の証拠を捉えることを目的としている。 2022年度末に97台の空気シャワー観測装置(ALPAQUITA)の設置が完了し、今年度は試験観測を開始した。このALPAQUITA空気シャワー観測装置の宇宙線到来方向決定精度を評価するために月による宇宙線遮蔽効果(月の影)の解析を行った。現在までに7TeV以上の宇宙線を検出しており、月の影は8σの統計的有意で検出できた。その結果より宇宙線到来方向決定精度はおよそ1度を示し、モンテカルロシミュレーションによる結果とよく一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、本研究の本体であるALPACA実験のプロトタイプの空気シャワー観測装置(ALPAQUITA)が完成し、検出エネルギー閾値、および宇宙線到来方向決定精度がモンテカルロシミュレーションによる結果とよく一致したことから、計画は順調に進展している。本研究からは次年度拡張に向けて、信号ケーブルなどの調達を行った。 また、半年ほどのデータを用いて南半球の超新星残骸RXJ1713.7-3946からの10-200TeV領域のガンマ線探索を行った。今回は有意な信号検出には至らなかったが、100TeV 領域ですでに先行研究に迫るフラックス上限値をつけることができたことも着実に計画が進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度から、ALPACA観測の本計画の建設が始まり、およそ400台の空気シャワー観測装置と4台の地下ミューオン検出装置の建設を開始する予定である。そのため、本研究目的としていた高密度空気シャワー観測装置はAPLACA観測計画の一部に組み込むこととして、観測エネルギー領域も10TeVから1000TeVの領域のガンマ線天体の観測ができるように再設計し直して、準備を進めている。2024年度中に空気シャワー観測装置は200台程度に増設され、1台の地下ミューオン検出装置の設置が完了する予定となる。これにより、バックグランドとなるハドロン宇宙線空気シャワーの除去ができるようになり、本格的な超高エネルギーガンマ線観測を開始する予定である。
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