研究実績の概要 |
令和4年度では、まずICP質量分析により2nu-ZICOS検出器に使用する高純度石英ガラスGE214中のTh量が15ng/g、U量が29ng/gという結果を得た。これにより、半径8cmの高純度石英製フラスコからの1年間当たりに発生するTl-208崩壊数は1,000,000事象、Bi-214の崩壊数は6,000,000事象が予想された。それらの背景事象の観測を避けるために、各ベータ崩壊の電子を観測しないようにフラスコ内にアニソールに耐性を有するバックを設置することを考案した。シミュレーションによると、検出器の中心から5cmの内側では1/100以上に背景事象を除去できることがわかった。このバック内に1LのZICOS用液体シンチレーターを格納すると、その中には100gのZr(iPrac)4が溶解するため、約0.4gのZr-96原子核が存在することから、年間約100事象の信号が期待される。しかし、2.6MeV以下では信号に対して2桁以上の背景事象が依然として存在するため、2.6MeV以上のエネルギー領域に限定した観測にするとS/N比が1程度となり、年間数10事象の二重ベータ崩壊事象の観測が期待されることがわかった。同様に、Bi-214事象も2MeV以上であれば容易に除去可能であり、更に高純度石英ガラス中のK含有量が180ng/gであるもののK-40の自然存在比から年間約100,000事象が発生するが、エネルギーが1MeV以上の事象は存在しないこともわかった。一方、液体シンチレーターを調製するために必要な200gのZr(iPrac)4を合成するため、共同研究者が業者に合成手法を指南したが、原料の調達に時間が掛かったため年度内に合成は完了しなかった。また、観測に使用する光電子増倍管H3378-50を8本購入してゲインを調整し、次年度に組み立てる2nu-ZICOS検出器の準備を行った。
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