研究課題/領域番号 |
22H01245
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関谷 洋之 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90402768)
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研究分担者 |
市村 晃一 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (80600064)
黒澤 俊介 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (80613637)
中島 康博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80792704)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 素粒子 / 検出器 / 暗黒物質 / 方向感度 / 極低放射能 |
研究実績の概要 |
ZnWO4 結晶シンチレータは先行研究において単色中性子ビームを用いた異方性発光の測定が行われていたが、今年度は産業技術総合研究所において、ZnWO4結晶の発光の異方性が大きいとされる2面(B 面とC 面)に先行研究よりも低エネルギーである 670 keV 準単色中性子を照射して酸素原子核反跳を測定した。しかし、結晶の表面研磨剤を従来のダイヤモンドパウダーから高純度SiO2 パウダーに変更した結晶を用いた測定で得られた発光の異方性は、 [ 8.1 ± 4.8(stat.) ± 11.6(syst.) ] % であり、異方性が検出器の分解能や誤差によって埋もれてしまう結果となった。 一方、実際の暗黒物質探索で使用するために用意した高純度 ZnWO4 結晶および光電子増倍管などの検出器部材を高純度ゲルマニウム検出器によって放射性不純物量を測定した。その値からバックグラウンド のエネルギースペクトルを予測し、酸素原子核における WIMP-核子のスピンに依存しない相互作用のエネルギースペクトルと比較することで、閾値 20 keVee の (方向感度に依らない) 暗黒物質探索の感度曲線 を算出した。解析の閾値は20 keVee と保守的に設定したにも関わらず、最も感度が良いのは WIMP 質量 70 GeV に対して、酸素原子核における WIMP-核子のスピンに依存しない相互作用断面積 2.5 × 10^-38 cm^2 であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の結果に基づき表面処理方法を変更した結晶を用意して中性子照射試験を行ったが、系統誤差の増加につながることが判明したので、改めて鏡面研磨が最適ということが分かった。放射線不純物の定量についても順調に実施でき、暗黒物質に対する感度を見積ることができた。今後の結晶の入手性は厳しいことが予想されるが、現在手元にある結晶で予定りに研究は遂行できそうである。
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今後の研究の推進方策 |
低エネルギーでのZnWO4結晶応答を継続して調べるため、引き続き集光量の向上を図る。結晶研磨の方法を検討すると同時に、発光波長に対して量子効率の高いフォトダイオード等の固体光検出器を用いた測定を行う。それから改めて産業技術総合研究所の中性子標準ビームラインでより低エネルギーの酸素反跳を測定する。入射する中性子は単色En=700keV程度になるようにT(p,n)反応を用いる計画で酸素反跳の影響ER~150keV程度の発光量の角度依存を調べる。 次に暗黒物質探索に向けての光検出器の最適化を行う。低放射能光検出器として、液体キセノン用の低バックグラウンド光電子増倍管の光電面をZnWO4の発光波長に合わせたものと、フォトダイオードなどの固体光検出器のどちらが良いかを判断し、実際の暗黒物質探索実験に備える。 また、ZnWO4結晶自体の低放射能化を進める。国内で1インチサイズの高純度結晶の作成に取り組む。Ge検出器を用いた材料のスクリーニングだけでなく、実際の結晶育成時の不純物の混入低減が重要であり、現在一番の問題だと思われる断熱材の低放射能化に取り組む。 そして実際に神岡の水シールド内で暗黒物質探索をするための防水を含めた検出器設計を手早く行い、暗黒物質探索実験を遂行する。
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