研究課題
無衝突衝撃波生成実験については、2023年7月にヘリウム雰囲気ガスを用いた無衝突衝撃波生成実験に参加し、実験データを取得した。ヘリウム磁化プラズマを生成できる可能性が実験的に示唆された。窒素ガスを用いた2022年度の実験に比べてイオンが軽いため、短時間での衝撃波生成が可能になるかもしれない。また、磁気プローブを用いた電磁波動の検出にも成功した。取得したデータの解析方法を確立させた。2022年の実験で取得したデータの解析も進め、衝撃波遷移層で生じた波動が背景磁場にそって伝播する波動を捉えた可能性がある。2022年の実験で取得したトムソン散乱計測や自発光計測のデータを解析し、窒素ガス圧の異なるデータを新たに取得すると実験データの理論的解釈をしやすくなることがわかった。そこで、追加データを取得するために2024年度の実験提案を行って無事に採択され、大阪大学レーザー科学研究所のマシンタイム4日分を獲得した。可視光望遠鏡による超新星残骸観測については、2023年夏の猛暑により赤道儀や制御用PCなどの電子機器の不具合が起こった。さらに、観測ドームの開閉装置が故障したが、故障原因を特定でき、部品交換や損傷箇所の修復を行い、復旧の目処が立ってきた。遠隔からの観測が行えなくなったので観測効率が下がったものの、超新星残骸Tychoを2台のCMOSカメラで観測することに成功した。実際に取得した複数の観測データの中から有効なデータを選別し、それらを重ね合せて統計の良い1つの画像データにする方法も確立した。CMOSカメラは年間通じて湿気などによる大きな損傷を受けることはなかった。また、本研究に広く関連する衝撃波の存在する現象の理論・観測研究も行い、超新星残骸RCW86の非熱的X線放射、ガンマ線バーストの可視光・X線残光放射、潮汐破壊現象の電波放射に対する知見を得た。
3: やや遅れている
超新星残骸を観測するための可視光望遠鏡の観測ドームの開閉システムが2023年7月に故障し、その原因と損傷部品の特定、および交換部品の発注・納品に時間を要した。2024年4月現在、発注した交換部品の一部が未納である。そのため、手動でドーム開閉をすることとなり、遠隔からの観測実施が不可能になってしまった。そのため観測効率が低下し、当初の観測計画通りの観測時間の確保ができなかった。その中でも、超新星残骸Tychoを2台のカメラで撮影することができたのは前進であると考えている。また、最低でも1台の望遠鏡では、長時間露光の観測データ取得を再開できる見込みが立ってきている。一方、大型レーザーを用いた無衝突生成実験については、データ取得もデータ解析の進捗も順調であり、当初の計画通りに進んでいる。
無衝突衝撃波生成実験については、2024年9-10月頃に予定されている実験の準備を行い、実験データを取得する。2022年度実験の結果も含めてデータ解析を進め、得られた実験データの物理的解釈の議論を行う。解析結果と1次元電磁粒子シミュレーションや多次元磁気流体シミュレーションの結果を比較し、トムソン散乱計測で得られた非対称ダブルピークを持つスペクトル、自発光イメージング計測で得られた波面の波打ち、磁気プローブ計測で得られた電磁波動の起源について考察する。超新星残骸の可視光観測については、まず交換部品が到着次第、ドーム開閉システムを修復し、観測を再開させる。夏の猛暑による電子機器の損傷や不具合の発生を防ぐための対策も行う。2台のCMOSカメラの望遠鏡をそれぞれ2台のPCで制御して遠隔から同時観測を行う体制を整え、観測効率を大幅に改善させる。8月上旬から11月上旬には超新星残骸Tychoの観測を行う。ダーク及びフラットフレームの取得方法について再検討を行う。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
Journal of High Energy Astrophysics
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https://research.a01.aoyama.ac.jp/blog/future/004/