多方面で多くの研究の進展があった。超新星重力レンズについて、ハッブル宇宙望遠鏡のアーカイブデータの調査により、重力レンズで三つに分裂されて観測された赤方偏移3の超新星を発見した。異なる時刻の観測データがないことから時間の遅れは観測できなかったが、逆に質量モデルから計算された時間の遅れから、この超新星は衝撃波冷却によって急激に温度を下げている時期の超新星であることが判明した。この光度及び温度進化から、超新星の親星の半径を推定することができ、親星が赤色超巨星であることを突き止めた。またこの発見を含めたーアーカイブデータの系統調査から、遠方宇宙の超新星発生率が従来考えられていたよりも大きい兆候も得られた。これは超新星重力レンズを用いたハッブル定数測定に向けた良いニュースだと言える。この発見はNature誌に報告された。 他にも、重力レンズクエーサーの新たな探査法としてガイア衛星を用いた探査で大きな進展が得られた。100個以上の新しい重力レンズクエーサーを発見することで大幅に発見数を増やし、またクエーサーの位置情報を巧みに利用することでこれまで発見が難しかった分離角の小さい重力レンズクエーサーを発見できることも実証した。これ以外に、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡観測データの解析を含めた銀河団重力レンズの解析によって質量分布の理解を深めることができた。この研究により、銀河団重力レンズを用いたハッブル定数の精密測定の準備が整ったと言える。
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