研究課題
本研究の目的は、降着円盤系の小さなスケールの現象を解像しつつ大局的な効果を組み入れるための新しい数値実験のための実用的枠組み「円柱シアリング箱」モデルを改良拡張し、降着円盤での磁気乱流、円盤風の質量流束、円盤風による角運動量抜き取りと質量降着の4者の間の関係を、第一原理的な計算により定量的に明らかにすることである。2022年度は、申請者の最初の取り組みであるSuzuki et al.(2019)では考慮できてなかった、動径方向両端境界での振幅のミスマッチの影響を考慮する境界条件設定の修正を行った。そして改良した境界条件を数値シミュレーションコードへと実装し、円盤の厚みを考慮しない局所降着円盤の磁気流体数値シミュレーションに取り組んだ。我々の円柱シアリング箱モデルでは、回転系の典型的周波数であるエピサイクル振動数の空間依存性を正しく取り扱うことができるため、従来のデカルトシアリング箱近似では見ることができなかった物理現象を直接観察し解析できることが、大きな長所である。該当年度の研究では、円盤内に密度の濃淡構造が形成され、その帰結の1つとして、磁場が局所的に寄せ集められる領域が分布することが分かった。そしてこれら強磁場領域はでは、磁気的な爆発現象が間欠的に引き起こされることを明らかにした。以上の成果は英文査読誌に出版済(Suzuki 2023)であり、2023年にはドイツで開催された原始星周囲に形成される円盤の磁気流体現象の国際会議で招待講演も行った。
2: おおむね順調に進展している
初年度は翌年度への繰越を行ったが、その範囲内で上述した境界条件の改良と査読論文の発表までを行うことができた。翌年度の繰越を鑑みると「やや遅れている」と判断すべきであるが、その後鉛直方向の成層化を考慮した数値シミュレーションコードの構築(次項参照)には順調につなげているというのが現状である。以上を総合的に判断して、「順調に進展している」とした。
円盤の厚みの効果を取り扱うために、これまでに取り組んできた動径方向の密度や圧力の勾配に加え、鉛直方向の重力による成層化を考慮できるように数値実験コードを改良する。駆動された円盤風の外向き流を安定に扱うために、計算領域上下面境界では流れ出し境界条件を実装する。上空の上下面境界付近では密度が低いため、アルフベン速度が非常に大きくなる。 このため、CFL条件による制約から、数値計算を長時間行うことが困難となる。この問題を回避するため、ガス圧に比べ磁気圧が大きな場所のアルフベン速度に制限を掛けるボリス修正法もコードに実装する。これらの2つ項目のコード改変の数値テストを2024度内に完了させる。2025年度以降は、鉛直方向の成層化を考慮した降着円盤数値実験を遂行し、特に磁気駆動円盤風が降着円盤のエネルギー輸送と角運動量抜き取りに担う役割を定量的に吟味する。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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