研究課題/領域番号 |
22H01264
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
國生 拓摩 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (60803442)
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研究分担者 |
永山 貴宏 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (00533275)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超新星残骸 / 元素合成 / リン |
研究実績の概要 |
リンはDNAや細胞壁などの材料で、生命を司る元素のひとつである。その起源は超新星爆発にまでさかのぼるが、宇宙空間におけるリンの観測データは乏しく、リンの生成メカニズムや生成量はよく理解されていない。本研究は近赤外[PII]輝線に着目し、狭帯域フィルターを用いた超新星残骸のリン輝線マッピングおよび分光フォローアップ観測を行い、超新星爆発によるリン生成について探る。 南アフリカ望遠鏡IRSFと広島大学「かなた」望遠鏡を用いて、北天と南天の超新星残骸26天体を観測した。この観測では専用の狭帯域フィルターを用いて、リンの[PII]輝線および鉄の[FeII]輝線の広域マッピングを行った。観測の結果、26天体中4天体から[PII]輝線を検出した。また、[PII]輝線の上限値も用いて[PII]/[FeII]輝線強度比からリン/鉄の存在比を調べたところ、天体ごとに存在比は有意に異なり、リン生成量は超新星爆発に応じて異なることが示唆された。 本研究で4天体から[PII]輝線を検出したが、これらは星間物質を起源とする可能性がある。超新星爆発を起源とする場合、ガスの速度は1000 km/s以上が期待されるため、超新星爆発に伴うリン生成を正確に評価するには、輝線の速度測定から超新星起源のリンを同定する必要がある。この分光観測を行うため、IRSF専用分光器の開発を進めた。本装置は一通り完成しているが、本研究のために検出器をより高感度なものに置き換え、また分散素子もプリズムから回折格子に置き換える必要がある。このため、新しい検出器と回折格子の仕様を反映した光学・機械設計を行い、また並行して新しい検出器のための読み出し回路を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、観測を行う予定であった鹿児島大学1m望遠鏡のカメラが故障したため、この代替装置の選定や観測天体の最適化に時間を要した。IRSF専用分光器の開発も2022年度中に終える予定であったが、上記のカメラ故障の対応のため、当初の予定より遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの観測でリンを検出した超新星残骸について、星間物質起源と超新星起源の成分を切り分けるため、星間ダストの分布も考慮したデータ解析を進める。星間空間では、リンに比べて鉄はダストに多く取り込まれており、固相にある鉄は輝線を放射しないため、このような領域ではリン/鉄比が大きくなる可能性がある。そこで、衝撃波シェルについてダスト破壊の進行度を調べることで、この可能性について検討する。IRSF専用分光器の開発では、これまで行った光学・機械設計を実際の装置に反映して、望遠鏡からの光を模擬した光源を用いて光学試験を行う。
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