研究課題/領域番号 |
22H01270
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
田中 賢幸 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (50589207)
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研究分担者 |
嶋川 里澄 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (20823321)
臼田 功美子 (佐藤功美子) 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (70455202)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 銀河進化 / 近傍宇宙 / シチズンサイエンス / 大規模データ |
研究実績の概要 |
2023年度の最大の実績は、GALAXY CRUISEの市民天文学者による銀河分類を解析し、科学結果を査読論文として出版したことである。GALAXY CRUISE は2019年に始まり、2022年4月でseason1を終了した。そこに含まれる約2万天体の分類結果を丁寧に調べたところ、先行研究よりもより高い精度で銀河の形態分類ができたことがわかった。とりわけ、今まで見逃されてきた多くの衝突・合体銀河を発見し、それらの銀河では星形成活動やブラックホール活動が顕著になっていることがはっきりとわかった。violent mergerと呼ばれる、合体の最も激しい段階にある銀河では、その傾向が特に顕著であった。市民天文学者による分類カタログは世界に向けて公開され、今後更に活用されることを期待している。その論文に続けて、season1の分類を元に機械学習を行い、大量の渦巻銀河とリング銀河を見つけ出した論文も出版した。とりわけリング銀河は稀な銀河で、今回の大量サンプルはその起源に迫る重要なものであると考えている。これら2本の論文はいずれもプレスリリースを行った。並行して、IllustrisTNGと呼ばれる近年の大規模コミューターシミュレーションによる銀河を可視化した画像を、市民天文学者に分類してもらうシミュレーションキャンペーンも行い、年度末に完了した。シミュレーションの中の銀河は、その合体の歴史や詳細な物理的性質がよくわかっているため、観測と比較をすることには大きな意味がある。初期解析から非常に興味深い結果が出てきており、更なる解析が楽しみである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Season1の論文を出版し、さらに機械学習に応用した論文も出版している。さらにシミュレーションキャンペーンも実施・完了した。Season2も再開しており、着実に分類データが集まってきている。これらの状況から、本研究課題は着実に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はシミュレーションキャンペーンで得られたデータを丁寧に解析する。市民天文学者に分類してもらったデータはシミュレーション銀河だけではなく、実はseason1, 2の銀河も一部含めている。これは市民天文学者の分類が時間とともにどう変化したかを調べる良いサンプルで、分類に対する慣れや、分類する人による系統的な違いを定量評価したい。さらに、シミュレーション銀河に対しては様々な物理情報を持っているので、それらと実際の分類結果を詳細に比較する。とりわけ銀河の合体史はシミュレーションでしか得られないもので、そこと観測できる形態との紐付けを試みたい。並行して、継続中のseason2でもかなりの分類が揃ってきた。Season2ではseason1と比べて暗い銀河を多く含むため、season1のデータと合わせると、銀河の性質、とりわけ衝突・合体の頻度等が明るさによってどのように変化をしたのかを明らかにすることができる。また、2024度は銀河衝突に焦点を当てた研究会も開催予定である。銀河衝突・合体の研究者を一堂に集め、近年の進捗を共有し、本研究の更なる発展を目指したい。最後に、GALAXY CRUISEは研究だけではなく、研究成果の社会還元もその大きな目的の一つである。引き続きGALAXY CRUISE website やソーシャルメディアを中心とした、社会との積極的なコミュニケーションを続ける予定である。
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