研究課題/領域番号 |
22H01279
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
藤谷 渉 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (20755615)
|
研究分担者 |
薮田 ひかる 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (30530844)
日比谷 由紀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30867536)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 水熱変成作用 / Mn-Cr年代測定 / Cr, Ti安定同位体比 / 有機物 / 炭酸塩鉱物 |
研究実績の概要 |
本研究では、水質変成作用のあとに熱変成作用を受けた炭素質コンドライト隕石に着目し、炭酸塩鉱物のMn-Cr年代測定、有機物分析、および全岩のCr, Ti安定同位体比分析を組み合わせて母天体の熱進化を解明するものである。特に、炭酸塩鉱物の形成年代から、母天体の熱変成作用を起こした熱源(放射性核種、他天体衝突、あるいは太陽放射など)を明らかにすることを目標としている。 Mn-Cr年代測定については、MnおよびCrを含むCa,Mg炭酸塩(ドロマイト)を実験室内の高温高圧容器で非晶質炭酸塩を経由して合成することに成功し、それを二次イオン質量分析計の標準試料として使用してドロマイトの形成年代を高精度で測定する手法が確立しつつある。先行研究により年代測定が試みられたIvuna CIコンドライトのドロマイトについてこの手法を適用し、過去に報告された年代値はおおよそ130万年ほど補正が必要となることがわかった。この成果をまとめた論文はGeochimica et Cosmochimica Acta誌に投稿中である。 水熱変成作用を受けた隕石としてはWIS 91600を観察しており、本科研費で導入した電子顕微鏡を用いて、小さいながらも炭酸塩鉱物を発見することができた。また、この試料の有機物の分離はすでに終了している。さらに、54Cr/52Cr比の測定も終了しており、CM, CIコンドライトあるいはTagish Lake隕石と近い値であることがわかった。本成果は、この試料がどのような隕石と母天体を共有しうるかを考察するうえで重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年遅れた電子顕微鏡の導入が2023年10月に無事に終了し、それを用いて水熱変成作用を受けた炭酸塩コンドライト隕石の観察が順調に進んでいる。ドロマイトの年代測定法の開発も順調に進み、その試金石として分析したCIコンドライトの結果を論文にまとめて投稿することができた。さらに、本丸である水熱変成作用を受けたWIS 91600隕石についても、Cr, Ti安定同位体比分析、有機物分析が順調に進行している。以上のことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は開発した年代測定法をWIS 91600隕石を含む水熱変成作用を受けた炭素質コンドライト隕石の炭酸塩鉱物に適用していく。Y-82162, Y-86720, Y-86789, B-7904, Y-86029, Y-980115といった試料が国立極地研究所から貸与されており、今後はこれらの試料の観察も進め、炭酸塩鉱物が発見された場合は年代測定を行う。 WIS 91600隕石は引き続いてTiの安定同位体比分析を行う。54Cr/52Cr比のみでは、CM, CIコンドライトあるいはTagish Lake隕石を区別するのは難しいが、50Ti/47Ti比と組み合わせることでそれが可能になると期待される。
|