研究課題
NASAのOMNIデータを用いて日ごとの太陽風変動の情報を入力として取り入れた3次元MHD計算を行い、太陽圏の大域的構造を再現した。Voyager 1号、2号の軌道に沿った太陽圏界面の位置が120天文単位付近にあることを確認した。太陽風中の乱流の効果で、終端衝撃波の局所的な衝撃波角が50度程度になる場合があることに着目し、この場合の終端衝撃波の2次元フル粒子計算を行った。このときピックアップイオンの存在を陽に考慮して、背景電子、陽子、およびピックアップイオン(相対密度25%の陽子)から成るプラズマを想定した。アルフベンマッハ数は5.1、上流電子ベータ値は0.25、上流電子のプラズマ周波数とサイクロトロン周波数の比は4、イオン・電子間質量比を100とした。斜め衝撃波特有の現象であるイオンの反射が見られたが、反射されるのはピックアップイオンのみで、背景イオンは反射されないことがわかった。一部のピックアップイオンはイオンジャイロ周波数の逆数の100倍程度の時間をかけて非熱的エネルギーにまで加速された。加速機構として衝撃波ドリフト加速が確認されたが、詳しい粒子軌道解析によって、衝撃波での反射直後には異なる加速機構がはたらくことがわかった。反射イオンが励起する上流波動がピックアップイオンの初期加速に影響している可能性について、詳細を解析中である。定常太陽風条件下での太陽圏の3次元MHD計算結果を用いて、銀河宇宙線の太陽圏内への進入過程をテスト粒子計算した。従来よりも桁違いに多くの粒子軌道を追うことで統計精度を上げることに成功しており、現在データを精査中である。
2: おおむね順調に進展している
年度当初に提出した研究実施計画に沿って進めることができた。具体的内容は「研究実績の概要」で述べたとおりである。
今後はフル粒子計算とテスト粒子計算に注力する。フル粒子計算では、被加速イオンの軌道解析を進めて加速機構の解明を目指す。とくに初期加速の機構を精査する。これまでに行った計算で、上流で反射イオンが励起する波動が衝撃波下流の電磁場構造に強く影響を与えることがわかっている。一般に上流波動の特徴は衝撃波のパラメータに依存するため、電磁場構造のパラメータ依存性についても調査していく(次年度以降)。テスト粒子計算では、粒子統計の精度を上げたことで、太陽圏深部に侵入する銀河宇宙線をいくつかのグループに分けることができている。主成分分析を行ってこれらの特徴を精査する。また次年度以降に、波動による粒子散乱の効果を取り入れた計算を行い、観測される宇宙線の統計的特徴(含、到来方向異方性)の起源を明らかにする。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
The Astrophysical Journal
巻: 946 ページ: 68(1-8)
10.3847/1538-4357/acbb6d
Reviews of Modern Plasma Physics
巻: 6 ページ: 29
10.1007/s41614-022-00093-1
Acta Physica Polonica B Proceedings Supplement
巻: 15 ページ: 3-A20(1-6)
Physical Review E
巻: 106 ページ: 025205(1-7)
10.1103/physreve.106.025205
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K002597/research.html
http://www.esst.kyushu-u.ac.jp/~space/publication