研究課題/領域番号 |
22H01287
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松清 修一 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (00380709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 宇宙線加速・輸送 / 太陽圏 / 粒子シミュレーション / 磁気流体シミュレーション |
研究実績の概要 |
太陽圏の3次元MHD計算(定常太陽風条件下)結果を用いた、銀河宇宙線の太陽圏への進入過程のテスト粒子計算を継続して行った。テスト粒子の数を100億個に増やすことで高精度の粒子統計の議論を可能にし、以下の知見を得た。エネルギーの低い(10ギガ電子ボルト)粒子は、太陽圏界面の磁場が弱くなる領域から圏内に侵入して、計算の内側境界の高緯度側に到達する。高緯度側に到達する理由の一つは太陽磁場の極性が正であることによるドリフト効果で説明できる。もう一つの理由は、多くの粒子が圏内尾部のスパイラル磁場に沿って運動しながら極域に到達するためである。一方で経度による到達位置の違いは見られなかった。エネルギーの高い(1テラ電子ボルト)粒子は、比較的どこからでも圏内に進入できるが、星間磁場と太陽圏界面が垂直になる南北方向からはより侵入しやすい一方、星間磁場が圧縮・強化されている太陽圏前面からは侵入しにくい。太陽圏磁場の吹き流し構造を反映して、尾部側から内側境界に到達する粒子が多い。このことと、地上観測で見られるテラ電子ボルト宇宙線の到来方向異方性との関連を今後精査する。 また、前年度に行った衝撃波角50度の終端衝撃波の2次元フル粒子計算のデータ解析を進めた。フル粒子計算としては過去最長の計算を行うことで、非熱的なピックアップイオンの生成までを初めて再現している。イオンのエネルギー分布を定量的に調べ、非熱的成分の生成効率が過去のハイブリッド計算の結果よりも高効率であることを示した。また高効率加速の原因が、背走イオンが斜め衝撃波上流で励起した大振幅波動が衝撃波面で圧縮、急峻化することによる衝撃波ポテンシャルの強化によっていることを示した。これにより入射ピックアップイオンが衝撃波サーフィン加速を起こし、その後さらに衝撃波ドリフト加速によってエネルギーを獲得することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に提出した研究実施計画に沿って進めることができた。具体的内容は「研究実績の概要」で述べたとおりである。
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今後の研究の推進方策 |
テスト粒子計算では、基になる3次元MHD計算のデータを高精度化することに取り組む。現在、波動による粒子散乱の効果の導入に着手しており、まずはこれを進める。このほか、内側境界の位置を現在の50天文単位から1天文単位にまで広げ、さらに太陽磁場の極性反転の効果なども順次取り入れて、地上観測データとの比較に道筋をつける。 終端衝撃波のフル粒子計算では、衝撃波角を変えた計算をすでに行っており、その結果を解析する。さらにマッハ数や、波面方向のシステム長を変化させて、衝撃波構造と粒子加速効率のパラメータ依存性を詳しく調査する。これにより、広大な終端衝撃波のどこで高効率の粒子加速が起こるのかを同定する。
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