研究課題/領域番号 |
22H01299
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森 正人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (00749179)
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研究分担者 |
小坂 優 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90746398)
建部 洋晶 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), グループリーダー (40466876)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 海氷 / 地球温暖化 / テレコネクション / 異常気象 / 北極-中緯度連関 |
研究実績の概要 |
WACEパターンの形成に対する大気-海洋-海氷相互作用の重要性を調査するために、大気海洋結合モデルのhistorical実験から得た海面水温や海氷を境界条件として、大気大循環モデルの長期積分を実施した(アンサンブルメンバー数を拡充した)。これら2つの実験を比較することで、WACEパターンの振幅に対する結合過程の影響を評価したところ、現在気候の条件下においても、結合した方がWACEの振幅が大きくなることが明らかになった。このことは、大気-海氷間の正のフィードバックがWACEの振幅を増幅させていることを示唆している。 北極のバレンツ-カラ海における冬季の海氷減少量はWACEパターンの発現にとって重要であるが、この海域における冬季の海氷減少速度は最新の気候モデルによるシミュレーションであっても過小評価傾向にあった。メキシコ湾流域の海面水温を観測データで修正する実験を実施し、バレンツ-カラ海への熱輸送の増加により、過去数十年にわたる冬季の海氷減少を再現できることが明らかになった。これらの結果は論文にまとめられ、Nature Communications誌から出版された(Yamagami et al. 2022)。 2020年12月にユーラシア大陸中緯度で異常寒波が観測され、WACEパターンを伴っていた。大気大循環モデルによる大規模アンサンブル実験により、北極海氷の減少の寄与があったことが明らかになった(Nishii et al. 2022)。 WACEパターンは、より短い時間スケールではウラルブロッキングに対応すると考えられている。北半球で特に冬季に発生するブロッキング現象の維持メカニズムを、再解析データにもとづいて解析し、多くの場所で発生するブロッキング現象において、これまで看過されてきた傾圧エネルギー変換が最も重要であることを示した(Martineau et al. 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WACEパターンの形成に対する大気-海洋-海氷相互作用の重要性を調査するための実験(前述)が計画通り終了した。その結果、結合過程の有無がWACEパターンの振幅に影響を与えていることが明らかになった。引き続き詳細なメカニズムの解明を目指し調査を進める。 2020年12月に発生したWACEイベントに対する海氷減少の影響を定量化することができた。しかし一方で、結合モデルにおける典型的なWACEイベントに伴う感度実験については遅れが生じている。実験が終わり次第取り解析に組んでいく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
大気海洋結合モデルによるhistorical実験とその対となる大気大循環モデル実験との比較から、結合過程の有無がWACEパターンの振幅に影響を与えていることが明らかになった。しかしそのメカニズムは依然として未解明な部分が多い。引き続き詳細なメカニズムの解明を目指し調査を進める。 WACEパターンの発現に対してNAOなどの他のテレコネクションパターンの影響があることが指摘されている。そこで、WACEパターンだけではなく、他のテレコネクションパターンとの関係性なども考慮に入れた解析を行う予定である。
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