研究課題/領域番号 |
22H01309
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土井 一生 京都大学, 防災研究所, 助教 (00572976)
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研究分担者 |
岡本 隆 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353626)
大澤 光 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70839703)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 地すべり / 地震波 / 斜面安定計算 / 不均質構造 / 地形 / 間隙水圧 / 変位 |
研究実績の概要 |
既存の観測システムを活かすため、研究代表者・研究分担者がこれまで研究対象としてきた北海道釧路町の海岸地すべりを、本研究においても研究対象とすることとした。本年度は、この地すべり、および、その周辺部において、数台の短周期速度計の追加設置、高周波数で観測可能な伸縮計の設置、水文状態の入力条件となる気象観測装置の設置をおこない、いずれも連続観測を開始した。 また、得られた地震波形記録の解析をおこない、地すべり内での地震動の不均質性の特徴を抽出した。まず、波形の特徴を周波数帯ごとに整理した。その結果、低周波数帯(おおむね波長が地すべりの大きさよりも長い帯域)では、どの観測点も似た動きを示したのに対し、周波数帯が高くなるにつれ、地震波の山谷が観測点間でずれ始めた。次に、観測点間の位相差を周波数帯ごとに調べたところ、低周波数帯においては、位相差は0に近く、さらに周波数に比例して位相差が大きくなったことから、分散性の小さな地震波が平面波として伝播していることが示唆された。周波数帯が高くなると、位相差と周波数の間に見られる比例定数が低周波数帯と異なる値を持ち、見かけ速度が周波数帯によって変わることが示唆された。さらに高周波数帯となると、位相差が周波数によらずランダムな様相を呈する場合などが見られた。地すべり内での地震波の伝播特性が、地すべりの大きさなどによって特徴づけられる地震波の波長(周波数帯)に大きく依存することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度設営した観測システムも含め、順調に観測データの取得が進んでいる。また、弱い地震動に対しては、観測データから地震波の伝播特性の抽出が順調に進展している。さらに、2023年2月25日に釧路沖を震源とするマグニチュード6.0の地震が発生し、地すべり地内で 150 gal 程度の最大加速度を記録した。地すべりの変位や間隙水圧に顕著な変化は見られなかったものの、地震動と変位や間隙水圧との比較によって、強震がもらたす地すべり挙動への影響を考察しうるデータが取得できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度設営した観測システムを用いて、引き続き連続的に地震・斜面観測を実施する。期間中に地すべりの変動に伴う破損やケーブルの切断などが生じた場合は、随時補修を重ねながら可能な限り観測体制を維持する。さらに、研究代表者・研究分担者がこれまでに観測システムを作り上げてきた他のフィールドでも同様の観測が可能か模索し、観測点が設置できた場合には、フィールドによる違いについて検討する。 また、今年度、地震波の伝播特性を明らかにするためにおこなった解析に対して、扱う地震を増やし、地震波の入射方向に対する伝播特性の普遍性や相違点について明らかにする。さらにこの特徴と地形や内部構造の特徴を比較するため、簡易貫入試験や表面波探査などを必要に応じて実施する。 強震時に斜面の変位や過剰間隙水圧の生成・消散を観測することができた場合は、どのタイミングで変位や間隙水圧の生成・消散が生じたかを明らかにし、その時の地震動の特徴について、地震波の最大振幅や継続時間などの特徴、地震波の周波数ごとの伝播特性の違いなどと対応するかについて調べる。 最後にこの結果から、従来の安定計算の手法と比べ、斜面内部の地震動の多様性を考慮した場合、どの程度見積もりが異なるか。また、地震動の周期による振る舞いの違いや時空間的な多様性を考慮して安定計算手法をどのように高精度化するかについてその方策を提案する。
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