研究課題/領域番号 |
22H01312
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
横山 正 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 准教授 (60403101)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 風化 / 花崗岩 / 溶解 / 間隙 |
研究実績の概要 |
令和5年度は,令和4年度に引き続き,新鮮部から風化部までの一連の変化が確認できる花崗岩のボーリングコアを対象とした研究を行った。このボーリングコアは,広島大学防災・減災研究センターによって地表から深さ20 mまで掘削されたものであり,地表付近は全体に黄褐色でもろく風化が進んだ状態であるが,地下深部は白っぽくて硬く新鮮な状態である。また,コア内の各所にある割れ目の周辺には,多くの場合,鉄の水酸化物が沈殿することで生じる褐色の帯が認められる。 岩石内部の溶存元素の移動は,水の流れ(移流)と水中の元素の拡散により進行する。令和4年度の研究で,風化の進行に伴い,間隙率や浸透率,拡散係数などがどう変化するかの知見が得られた。令和5年度は,それらのデータを解析することで,風化の各段階において,移流と拡散のどちらの寄与が大きいかを見積もった。また,ボーリンコアから風化度が異なる試料を切り出して,それぞれを水と反応させる実験を行い,どのような元素がどのような速度で溶出するかを調べた。その結果に基づき,風化が進行すると水-鉱物反応面積がどう変化するかを評価した。さらに,割れ目周辺の鉄の沈殿現象に着目して,割れ目を流れる地下水から流入する鉄と,花崗岩内に存在する黒雲母からのその場で溶出する鉄のどちらが主な鉄の供給源であるかを,岩石の化学分析や,鉄の溶出や輸送を模擬した数値計算により調べた。これらの成果の一部は,既に国内学会および国際学会で発表し,学術誌にも投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画段階では,新鮮部から風化部までの一連の変化が観察できる花崗岩のボーリングコアを使用できる目処は立っていなかった。このため,当初は,確実に入手可能な新鮮な花崗岩を人為的に風化させて,諸物性の変化を調べることを計画していた。しかし,ボーリングコアを使用できる状態になったため,天然の風化の実態を把握した上で,人為的な風化との比較も可能な状態になっている。既にボーリングコアの解析はかなり進んでいて,得られたデータの学会発表や学術誌への投稿も進展しており,おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,花崗岩の間隙率,鉱物組成,浸透率,色,硬度,弾性波速度などの物性値が,風化の進行に伴いどの程度変化するかのデータが蓄積されてきた。今後は,さらにデータの拡充を図りつつ,それらの解析を進めて,それぞれの物性がどのように影響を及ぼし合いながら風化が進んでいくかをを明らかにする。また,風化度が異なる試料を用いた溶解実験をさらに進めて,元素が溶出する速さや水-鉱物反応面積が風化の進行と共にどう変化するかを明らかにする。さらに,新鮮な花崗岩を加熱して人為的に粒界を分離させる実験も進める。加熱実験の場合は,岩石内部で粘土鉱物が生じることなく粒界が分離するが,天然試料の場合は,風化が進んだものには粘土鉱物が生じている。加熱実験の結果と天然試料の解析結果とを比較することで,風化に伴う反応や物質移動特性の変化において粘土鉱物がどのような役割を果たしているかを評価する。 最終的には,これらの分析や実験で得られたデータを用いて,岩石の風化を模擬する数値計算(反応輸送モデリング)を行って,ボーリングコアで観察される新鮮部から風化部までの一連の変化がどのような過程を経て生じたかを明らかにしていく。
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