研究課題/領域番号 |
22H01318
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西村 太志 東北大学, 理学研究科, 教授 (40222187)
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研究分担者 |
中原 恒 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20302078)
田口 貴美子 東北大学, 理学研究科, 助教 (80965335)
中道 治久 京都大学, 防災研究所, 准教授 (00420373)
村田 健史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 総合テストベッド研究開発推進センター, 研究統括 (20274342)
長妻 努 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク研究所レジリエントICT研究センター, 室長 (50359014)
小園 誠史 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山防災研究部門, 主任研究員 (40506747)
江本 賢太郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80707597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 噴火ダイナミクス / 地震観測 / 映像観測 / DAS |
研究実績の概要 |
爆発的噴火は、地下のマグマが液相から気相そして固相へと変化し、それらが複雑に相互作用しながら超高速で大気中へ放出される、本研究は、超高密度多点地震観測と高時間分解能の映像観測をもとに、爆発的噴火の発生過程を明らかにする。最新の震動計測技術である光ファイバーケーブルとDASと地震計アレーのデータ解析から、マグマ溜まり・火道の位置や、爆発的噴火時の火道内震動源の時空間分布を得る。映像データの分析から火口直上の噴煙運動を定量化する。両者の比較から、火道内マグマの上昇速度や噴出率の時間変動を推定し、噴火規模や強度、継続時間等との関係を調べ、火道流モデルと比較し爆発的噴火のダイナミクスを解明する。 2022年6月下旬に、京都大学火山活動研究センターのハルタ山観測点周辺に合計24台の上下動地震計を設置し、現地収録方式で観測を開始した。また、2022年11月11日から12月9日までの約1ヶ月間、島内1周約39kmと野尻川沿い約4.4kmの国土交通省の既設の光ファイバーケーブルに、大隅河川国道事務所桜島砂防出張所においてDAS(Distributed Acoustic Sensing)を接続し、測定間隔4.8mの超多点高密度で地震動を計測した。地震計アレーを設置以降、200以上の爆発・噴火が発生している。また、DASの観測期間中には、10以上の爆発・噴火を記録するとともに、12月8日には桜島北部の2箇所で火薬を用いた人工地震実験による地震波を記録することができた。11月29日には野尻川で発生した土石流を記録した。桜島火山の南の垂水市において、高分解能の映像観測を開始し、爆発・噴煙に伴う火山灰挙動を定量的に捉える観測を開始した。これらのデータを解析することで、爆発的噴火時の地下マグマの動態と噴煙挙動の関係を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膨大なデータ量となるDAS記録を保存・整理し、爆発・噴火や土石流、自然地震の地震波のレコードセクションを作成した。その結果、桜島一周道路沿いの光ファーバーケーブルは、DASからの距離が遠くなる桜島西側の測定点でS/N比が十分でないものの、南部から北部にかけて信号記録を良好に記録することができた。また、爆発的噴火に伴う地震動は、周期数秒から10Hz程度まで記録されていること、噴火発生から20秒程度は火口方向から地震波が到来する、つまり火口・火道内に震動源が存在すること、爆発に伴う空気振動が重畳することがわかった。野尻川沿いのDAS記録をもとに土石流の流下速度がおおよそ15km/hであると推定した。地震計アレーによるデータは、データロガーの不調が時折あるものの、概ね順調に爆発・噴火に伴う地震動を記録した。また、噴火発生を自動的に検知するため、映像データの画像を2値化して解析する方法を桜島のデータに適用した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年実施したDAS観測および地震計アレー観測により、超高密度多点で爆発的噴火に伴う地震動を記録することができた。予備的な調査で基本的な地震波形特性を把握できたことから、今後は、爆発的噴火の震動源の位置決定を行う。地震計アレーデータへのMUSIC法の適用やDAS記録を用いて高分解能で噴火継続時間とともに地震波の到来方向がどのように変化するか推定したり、桜島一周DASデータをもとに地震波の輻射過程を調べたりするなどの解析を進める。また、人工地震実験で記録されたDAS記録を利用し、火口付近を伝播する波とそれ以外の波に着目し、火口直下に想定される火道周辺媒質の地震学的構造推定を試みる。垂水の映像観測では、噴火検知方法の改良を進める。また、現地収録している高時間分解能のデータに画像相関法などを適用し、噴煙挙動の強度の定量化を開始する。ハルタ山の地震計アレーおよび映像観測は、引き続き連続観測を継続し、より多くの爆発・噴火現象を記録する。また、2023年度にもDAS観測を1ヶ月ほど行う。2022年には、桜島は南岳火口で爆発的噴火を繰り返していたが、2023年頃より昭和火口での爆発が起きるようになった。爆発する火口による違いに着目し、地震計アレーやDAS観測、映像観測のデータ解析を進める。
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