研究課題/領域番号 |
22H01320
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
平内 健一 静岡大学, 理学部, 准教授 (10633290)
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研究分担者 |
岡崎 啓史 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (90784257)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / スロー地震 / マントルウェッジ / 蛇紋岩 / 間隙流体圧 / 鉱物沈殿 / 高温高圧実験 |
研究実績の概要 |
近年の地球物理観測研究は、沈み込み帯のepisodic tremor and slip(ETS)が高間隙流体圧下でのプレート境界断層帯の破壊作用に起因し、その発生周期が破壊後の割れ目が鉱物の析出により閉鎖されるまでの時間に対応する可能性を見出した。しかし、実際にどのような破壊-流体プロセスが深部スロー地震の発生域内で起きているのかはよくわかっていない。本研究では、前弧マントルウェッジ蛇紋岩の破壊と溶解-析出の繰り返しがETSの発生サイクルに対応するのかを明らかにするべく、ETS発生域に相当する温度圧力条件下(圧力1 GPa、温度500 °C)における蛇紋岩の熱水変形実験および実験後の試料の微細組織解析を行った。研究成果の概要は以下の通りである。 本実験では、試料内に封入する水の量を系統的に変化(0-12 vol%)させ、静水圧から静岩圧に相当する間隙流体圧下においてアンチゴライト蛇紋岩を一定歪速度(約10^-6 s^-1)下で変形させた。実験に要した時間は約2日間である。蛇紋岩試料の強度は含水量が増加するにしたがって減少したことから、含水量と間隙流体圧の間には正の相関があることがわかった。モール円解析に基づいて推定した間隙流体圧比(λ)は、試料の間隙率(1.1 vol%)を超える含水量になると、λが0.7を超えることがわかった。実験後の試料の微細組織解析の結果、λが大きくなるにつれて、破壊の様式がモードII型破壊(局所変形)からモードI型およびモードI-II型の混合破壊(全体変形)に変化することがわかった。このような混合破壊はETS発生域で形成された前弧マントルウェッジ起源の蛇紋岩体中にも認められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった「様々な間隙流体圧下での蛇紋岩試料の変形実験」については概ね達成できたから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より長い時間(1週間以上)をかけて変形実験を行い、天然の蛇紋岩体に認められるような蛇紋岩の破壊-沈殿作用を実験室で再現する。さらに、AEセンサーを取り付けることにより、破壊時の弾性波の検出を試みる。実験は令静岡大学設置のGriggs型固体圧式高温高圧三軸変形試験機を用いて行う。
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