研究課題/領域番号 |
22H01324
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
今山 武志 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 准教授 (90551961)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒマラヤ造山帯 / 大陸衝突帯 / 沈み込み初期 / 部分溶融 / 高圧変成岩 |
研究実績の概要 |
ヒマラヤ造山帯におけるインドプレート沈み込みから大陸衝突初期までの造構プロセスを解明するために、北西インド(ラダック地域)について、約1ヶ月間の国際共同野外調査を実施して、インダス-ツァンポ縫合帯火成岩類、青色片岩および部分溶融岩石の試料を採取した。また、分析試料測定準備の効率化のために、次世代秒速粉砕機と簡易炭素蒸着装置を購入して、研究環境を整備した。 大陸衝突帯の地殻深部物質の解明のために、Tso Morari超高圧変成岩類におけるジルコンのウラン-鉛年代測定を実施した。その結果、これらの超高圧変成岩類の起源は、従来考えられていたペルム紀のPanjub Trap由来ではなく、古生代初期の東ゴンドワナ大陸北縁で形成した火成岩類であることが明らかになった。また、全岩化学組成分析結果からは、古生代初期の火成活動は、リフト活動によるものであり、地殻成分のコンタミネーションを伴って形成されたことが推定される。これらの結果は、国際誌に投稿中である。 超高圧変成岩類の上昇過程の解明のために、チタナイトのウラン―鉛年代測定の予察的分析を実施したが、初期鉛の影響が大きく、有意な年代値は得られなかった。これらは、分析したチタナイトの変質が著しいことの影響かもしれない。より詳細な検討が今後必要である。 沈み込み初期の造構プロセスの解明のために、Nidarオフィオライト火成岩類の岩石学的・年代学的研究を実施した。その結果、1)火成岩類は緑色片岩相~角閃岩相下部の変質・変成作用を被っていること、2)斑レイ岩は海嶺型玄武岩に比べてTiやZr成分に乏しく、著しく枯渇したマントルから由来すること、3)冷却時の結晶分化作用と流体による変質作用の影響が大きいこと、4)沈み込み開始時期は約136 Maであること、5)西側のSpongtangオフィオライトと類似することなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、国際共同野外調査の実施により、研究遂行に必要な研究資料を大量に採取することに成功し、構造地質学的データも取得した。また、研究設備も順調に改善しており、研究補助員の雇用や外国人特別研究員の採用など、研究計画の実行可能性がより高くなった。特に、インダス-ツァンポ縫合帯オフィオライトの複数火成作用の推定は確実に進んでいる。北西インドのNidarオフィオライト研究からは、沈み込み初期のマグマ組成をある程度制約することができた。また、大陸衝突帯の地殻深部物質における部分溶融の役割も、変成岩岩石学や年代学的アプローチにおいて、確実に成果を得られている。そのため、現在までの進歩状況は概ね予定通りである。 一方で、超高圧変成岩類の上昇・冷却過程の推定は、チタナイトのウラン―鉛年代の初期鉛や角閃石のカリウム-アルゴン年代の過剰アルゴンの問題などにより、明確な成果は得られていない。また、インド-アジア大陸衝突前の白亜紀テクトニクスについては、未だ不明点が多い。
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今後の研究の推進方策 |
超高圧変成岩類の上昇・冷却過程の推定のために、ルチルのウラン―鉛年代測定や角閃石のアルゴン―アルゴン年代を海外の大学と共同研究により推進する。これらの結果から、超高圧変成岩類の変成圧力―温度-時間経路を推定する。また、薄片観察や電子線後方散乱回折を用いて構成鉱物の結晶粒の方位分布を解析して、大陸衝突帯における超高圧変成岩体の上昇メカニズムについて議論する。 インダス-ツァンポ縫合帯オフィオライトの高圧変成作用の成因を解明するために、採取した青色片岩や蛇紋岩メランジの岩石学的・年代学的研究を実施する。青色片岩の変成圧力―温度条件を相平衡解析により推定して、放射同位体測定により変成年代を推定する。また、蛇紋岩メランジ中の斑レイ岩のウラン-鉛年代測定を実施して、その形成時期を制約する。これらの結果により、大陸衝突前の白亜紀の沈み込み造構プロセスを復元する。
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