研究課題/領域番号 |
22H01329
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇野 正起 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (50748150)
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研究分担者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (40422092)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 流体圧変動 / 透水率変動 / 流体活動 / 反応透水実験 / 沈み込み帯 / 変成作用 / 深部低周波地震 / スロー地震 |
研究実績の概要 |
本年度は,100MPa, 500℃を超える条件下で実験可能な反応透水試験器を開発し,納品することができた.200MPa, 700℃での動作を確認済みである.これは岩石に流体を流しながら反応させる反応透水試験器としては世界でも類をみない高温高圧の試験器である.本装置は来年度立ち上げを行う. また,自然界の岩石ー流体反応帯からは,流体フラックスを制約するとともにそれが誘起しうる地震モーメントを見積り,鉱物脈(角閃石脈)の流体活動時間と誘起される地震モーメントの関係が,スロー地震の継続時間-地震モーメントのスケーリング則に載ることを示した.これは,変成反応条件の鉱物脈が,スロー地震と関係しうることを定量的に示した稀有な例である. さらに,東南極セール・ロンダーネ山地の高温変成岩中の花崗岩質岩脈群について,露頭観察からその破壊モードを明らかにするとともに,岩脈周囲の反応帯中の塩素濃度分布を反応輸送解析することで流体活動時間を制約し,岩脈の方位データの統計解析から応力場および流体圧を決定した.これらの結果より,岩脈および派生する鉱物脈の生成条件が深度20-30kmであること,その流体活動時間が高々100時間程度と短時間であること,岩脈の破壊モードは引張せん断であることを明らかにした.これは,火山下の深部低周波地震の発生震度,継続時間,破壊モードとよく一致しており,火山下の深部低周波地震の物質科学的な実態を明らかにしつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ウクライナ情勢およびコロナ禍で様々な実験装置の納期が遅れる中,独自の特注装置を無事年度内に納品することができた.自然界の岩石ー流体反応帯の解析からは,鉱物脈とスロー地震との関連を流体量を軸として定量的に示すことに成功している.また,さらに高温変成岩中の岩脈群の3次元露頭モデルから応力場解析にも取り組み,流体活動時間,流体量,流体圧変動に加えて,応力変動も捉えつつあることから,当初の計画以上の成果を上げている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は高温高圧反応透水試験器の立ち上げをおこない,これまでにない高温高圧条件下における岩石シール技術を確立するとともに,世界で最も高温高圧条件下における反応透水実験に挑戦する.さらに,自然界の岩石流体反応帯については,応力場解析の実例を増やし,応力および流体圧変動の空間的な分布の解明に取り組む.
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