研究課題/領域番号 |
22H01331
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 愛太郎 東京大学, 地震研究所, 教授 (20359201)
|
研究分担者 |
浅岡 陽一 東京大学, 宇宙線研究所, 特任准教授 (40345054)
熊澤 貴雄 統計数理研究所, リスク解析戦略研究センター, 特任准教授 (60649482)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 地震活動 / 応力場 / ハイパーカミオカンデ / 空洞掘削 |
研究実績の概要 |
2022年4月~6月にかけて、巨大空洞掘削域の直上において稠密地震観測網の設置場所の選定に加えて、土地所有者との交渉のために現地を複数回訪問して調整を進めた。2022年7月までに各地震観測点の設置予定場所を概ね確定した。また、使用機材の共同利用申請や、積雪対策を含めた観測点の設置方法について同時に検討した。2022年秋の巨大空洞掘削開始前にあたる2022年9月中に、高感度地震計をハイパーカミオカンデの建設サイトの直上に高密度に予定通り展開した。地震観測点は、半径約600mの円周内に、設置間隔が約100~500 mになるように調整して配置した。各観測点は、レナーツ社製の固有周期1秒の高感度地震計(3成分)とデータロガー(LS8800、HKS-9700など)、GNSSパッチアンテナから構成され、サンプリング周波数200Hzの高速サンプリングで連続波形記録を取得した。 2022年11月に保守作業に入り、記憶媒体とバッテリーの交換とバッテリーの追加を実施した。その際、観測ボックスの高剛性化やGNSSパッチアンテナの高さ調整、観測点機材の固定等の入念な積雪対策を実施した。また、各観測点で11月に回収した連続波形データを一つのWINファイルに統合し、データの前処理をおこなった。統合ファイルを目視で確認したところ、マグニチュードが負のイベントを高い信号対雑音比で記録されており、良好な観測記録が得られている。さらに、応力場モデリングの数値情報に基づいて、巨大空洞周辺域の応力場の時空間変化の推定に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
巨大空洞掘削域の直上における高密度多点の地震観測網の構築が、当初の予定通りに進展した。観測網を設置した場所の標高は約1500mと高地にあるため、天候の変化が激しく観測網の設置には想定以上の時間がかかったものの、巨大空洞掘削開始前に全観測点の展開を完了できた。2022年11月の保守作業の際に回収した連続波形データは、全ての観測点において正常に記録されていた。また、マグニチュードが負のイベントを高い信号対雑音比で記録できており、良好な観測記録が得られた点は当初の計画以上の進捗といえる。また、冬季の積雪対策を入念に実施することで、2022年3月時点でアクセス可能な観測点において、特段の積雪被害は生じていない。このように、計画はおおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
巨大空洞の掘削が進展しており、それに伴う地震イベントの検出のために、稠密地震観測網の維持を通して、長期間にわたる連続波形記録の取得を目指す。観測網の維持のために、年に2回の保守作業を実施する予定である。取得した連続波形記録に対して、機械学習モデルを適用することで地震波の走時データの時系列を取得し、それらを用いて各地震イベントを認定する。イベント認定後に、波形相関法により相対走時差データを取得し、相対走時差震源決定法を適用することで、高精度な震源分布を推定する。それらの震源情報の時空間分布に着目することで、巨大空洞掘削時の応力集中域との対応関係について調査する。さらに、巨大空洞掘削時に得られる数値情報に基づいて、応力場の時空間変化の推定と巨大空洞周辺域の岩盤強度の不均質性に関する情報を収集する。
|