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2022 年度 実績報告書

地球の水収支解明の鍵となる物質学的情報:島弧マントル起源物質の加水・脱水様式解読

研究課題

研究課題/領域番号 22H01332
配分区分補助金
研究機関金沢大学

研究代表者

森下 知晃  金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (80334746)

研究分担者 三宅 亮  京都大学, 理学研究科, 准教授 (10324609)
牛久保 孝行  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (10722837)
清水 健二  国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30420491)
水上 知行  金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (80396811)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードプレートテクトニクス / 島弧 / カンラン岩 / 流体包有物 / 海洋プレート変質 / 無水鉱物
研究実績の概要

本研究の目的:プレート沈み込み直上の島弧深部のマントルでの水循環について物質科学的にアプローチするために、本研究では島弧マグマに捕獲されたマントル由来岩石に着目し、流体包有物や無水鉱物中の含水量の測定などを進めている。研究対象試料は、台湾―フィリピンに南北に分布するルソン火山弧を中心に、オフィオライトなどの物質も比較対象のために解析を進めている。
マントル由来捕獲岩岩中の流体包有物:これまで我々の研究によって台湾東部に分布する火山岩中のカンラン岩捕獲岩の流体包有物には含水メルトや水成分を主体とする流体が存在することが明らかとなった。今年度は、フィリピンのピナツボ火山に捕獲されたカンラン岩について検討を行った。その結果、従来報告されていたような塩素を含む流体は研究対象とした3つの試料全てから確認され、その普遍性が明らかとなった。流体包有物の頻度は台湾の試料と比較して圧倒的に多い。
マントル由来捕獲岩中の無水鉱物(カンラン石)の含水量測定:全ての研究対象試料に普遍的に含まれている最も多い鉱物がカンラン石である。そこで、カンラン石について、台湾、フィリピン・ピナツボ火山の捕獲岩について測定を行った。その結果、含水量に関しては、ほぼ均質で、10ppm以下程度の極めて低い濃度であることがわかった。これは、流体包有物の絶対量の違いにも関わらず同じであることから、捕獲岩として採取された温度・圧力条件での水―カンラン石の分配に支配され、低い濃度であることを実証したことになる。これらの成果は、マントル中に流体が供給された場合、含水鉱物の形成条件よりも高い温度である場合、流体はマントル中にほとんど含まれず移動することを意味すると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでの我々の分析によって、ルソン島弧深部下のマントル起源物質中のカンラン石中に含まれる含水量が極めて低いことがわかった。そのため、地球の上部マントルにおいても、最も含水量が少ないと思われる海洋プレート下で部分溶融を受けたと思われるマントル物質との比較が必要となった。そこで、2024年度にインド洋で海洋プレート由来物質が採取される可能性が高い航海に参加し、これらの試料を同様の方法で測定し、比較検討することとなった。そのため、新たな試料を得て、解析を行う期間が必要となった。

今後の研究の推進方策

これまで、台湾―フィリピンにかけて南北に分布するルソン火山弧中のマントル由来捕獲岩の研究を続けている。台湾とフィリピン・ピナツボ火山岩中に捕獲されているマントル由来岩石は、流体包有物の種類には同一性があるが、その絶対量に大きな違いがあることがわかった。しかしながら、無水鉱物であるカンラン石の含水量はいずれも極めて低い値であった。これらの結果を含めて、以下の点を行なっていく。
より島弧深部由来と思われる流体の影響を強く受けているフィリピン・イラヤ火山岩中の捕獲岩について流体包有物の測定とその頻度の検討、および、カンラン石中の含水量の測定。これらの結果とこれまでの結果を比較することで、ルソン火山弧下の流体移動とそれらとの反応についての一般性と多様性を比較することができる。
カンラン石中の極微小結晶相の特徴と意義について、これらの島弧下由来マントル起源捕獲岩には、カンラン石中に微小なスピネルとそれらに伴うナノスケールの微小結晶相が含まれている可能性が指摘できる。そこで、透過型電子顕微鏡を用いてこれらの相の決定と、結晶包囲の関係を明らかにすることで、これらの微小相の形成メカニズムと、元々の流体成分の分布などに与える影響について検討する。
海洋プレート下由来マントル起源物質中の流体包有物・含水量測定を行う。今年度はインド洋において海洋底試料採取を行う調査航海に参加することとなった。そのため、これらのマントル由来物質について同様の分析を行うことで、島弧深部由来の物質と比較を行い、マントルの含水量について定量的に検討を行う。
上記のデータを総合的に検証し、ルソン火山弧下で起きているプレート沈み込み流体の影響によるマントル物質中での水移動・水成分貯蔵について検討する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] カルカッタ大学(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      カルカッタ大学
  • [国際共同研究] フィリピン大学(フィリピン)

    • 国名
      フィリピン
    • 外国機関名
      フィリピン大学
  • [雑誌論文] Contribution of carbonatite and recycled oceanic crust to petit-spot lavas on the western Pacific Plate2024

    • 著者名/発表者名
      Mikuni Kazuto、Hirano Naoto、Machida Shiki、Sumino Hirochika、Akizawa Norikatsu、Tamura Akihiro、Morishita Tomoaki、Kato Yasuhiro
    • 雑誌名

      Solid Earth

      巻: 15 ページ: 167~196

    • DOI

      10.5194/se-15-167-2024

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mayodia ophiolitic complex of Arunachal Pradesh, India: a multistage evolutionary record during the Tethyan closure2024

    • 著者名/発表者名
      Roy Sankhadeep、Ghosh Biswajit、Chattopadhaya Soumi、Bandyopadhyay Debaditya、Dhar Archisman、Koley Manojit、Morishita Tomoaki、Tripathi Sachin Kumar
    • 雑誌名

      International Geology Review

      巻: - ページ: 1~33

    • DOI

      10.1080/00206814.2024.2312512

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Petrography and stratigraphic Os isotopic ages of ferromanganese nodules from the Northwest Pacific east of Minamitorishima Island2024

    • 著者名/発表者名
      Nozaki Tatsuo、Goto Kosuke T.、Takaya Yutaro、Shimada Kazuhiko、Owada Akira、Shimoda Gen、Kimura Jun-Ichi、Chang Qing、Onoue Tetsuji、Machida Shiki、Ishii Teruaki、Shimizu Kenji、Hirano Naoto、Mimura Kazuhide、Yano Moei、Ohta Junichiro、Kato Yasuhiro
    • 雑誌名

      Journal of Asian Earth Sciences: X

      巻: 11 ページ: 100176~100176

    • DOI

      10.1016/j.jaesx.2024.100176

    • 査読あり
  • [雑誌論文] In situ sulfur isotope analysis of pyrite from the Ezuri Kuroko‐type volcanogenic massive sulfide deposit, northeastern Japan: Contribution of microbial sulfate reduction to initial sulfide mineralization2024

    • 著者名/発表者名
      Nozaki Tatsuo、Nagase Toshiro、Ushikubo Takayuki、Shimizu Kenji、Komuro Kosei
    • 雑誌名

      Resource Geology

      巻: 74 ページ: -

    • DOI

      10.1111/rge.12328

    • 査読あり
  • [雑誌論文] From rifting to emplacement: Variable mantle melting preserved in the central Palawan Ophiolite peridotites, Philippines2023

    • 著者名/発表者名
      Pasco Julius A.、Payot B.D.、Valera G.T.V.、Dycoco J.M.A.、Labis F.A.C.、Tamura A.、Morishita T.
    • 雑誌名

      International Geology Review

      巻: 65 ページ: 3466~3485

    • DOI

      10.1080/00206814.2023.2191347

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Petrogenesis of Gerf Neoproterozoic carbonatized peridotites (Egypt): Evidence of convergent margin metasomatism of depleted sub-arc mantle2023

    • 著者名/発表者名
      Khedr Mohamed Zaki、Al Desouky Ahmed A.、Kamh Samir、Hauzenberger Christoph、Arai Shoji、Tamura Akihiro、Whattam Scott A.、Morishita Tomoaki、Lasheen El Saeed R.、El-Awady Amr
    • 雑誌名

      Lithos

      巻: 450-451 ページ: 107192~107192

    • DOI

      10.1016/j.lithos.2023.107192

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 我々は本当に分析したいサンプルを分析しているのだろうか?超苦鉄質岩石を例として2023

    • 著者名/発表者名
      森下知晃
    • 学会等名
      日本地球化学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] オマーン掘削プロジェクトで得られた地殻ーマントル境界コア試料のOs同位体比と白金族元素組成の変化2023

    • 著者名/発表者名
      仙田量子、鈴木勝彦、森下知晃
    • 学会等名
      日本地球化学会年会
  • [学会発表] 擬似モホール計画:プチスポット火山産海洋地殻・マントル捕獲岩はマントル掘削の先駆けとなりうるか2023

    • 著者名/発表者名
      三國和音、平野直人、町田嗣樹、秋澤紀克、田村明弘、森下知晃
    • 学会等名
      日本地球化学会年会
  • [学会発表] Partial Melting of Neoproterozoic Metamorphic Core Complex Amphibolites in the Intra-Arc Subduction System of Neotethys2023

    • 著者名/発表者名
      Moazzen Mohssen et al.
    • 学会等名
      17th Internatioanl Water Rock Interaction and 14th Applied Isotope Geochemistry Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Noble gas analysis of fluid/melt inclusions in ultramafic rocks from West Greenland for constraining Archean mantle evolution2023

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Nanae, Sumino Hirochika, Morishita Tomoaki et al.
    • 学会等名
      Goldschmidt Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Highly siderophile element geochemistry of Phanerozoic komatiites and related mafic-ultramafic rocks in Gorgona island, Columbia.2023

    • 著者名/発表者名
      Ihara Yuta, Ishikawa Akira, Yokoyama Tetsuya, Shimizu Kenji
    • 学会等名
      Goldschmidt Conference
    • 国際学会
  • [備考] MANTLE MORISHITA LAB

    • URL

      http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/tomo/home.html

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公開日: 2024-12-25  

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