研究課題/領域番号 |
22H01334
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中島 陽一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50700209)
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研究分担者 |
坂巻 竜也 東北大学, 理学研究科, 助教 (30630769)
PUSZTAI LASZLO 熊本大学, 国際先端科学技術研究機構, 卓越教授 (40810859)
松田 和博 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (50362447)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地球コア / 音速 / 構造 / 高圧高温 |
研究実績の概要 |
今年度は、これまでに高圧下における音速測定がほとんど行われていなかったFe-H合金に着目し研究を進めた。fcc-FeHx単相を高圧下で合成し、非弾性X線散乱測定を行った。得られたfcc-FeHxの縦波音響フォノンモードの分散関係より、18-68 GPaの圧力範囲における縦波音波速度を決定した。先行研究と比較すると、fcc-FeHx の縦波速度はhcp-Feと比べ大きく、水素はFeの音速を増大させることが明らかになった。水素がFeの音速を増大させる効果は、水素がFe格子に侵入型として固溶することでFeの体積増加に伴う密度減少のみでは説明できず、体積弾性率が増加することも重要な因子となることが状態方程式及び弾性パラメータの比較から予想される。また、液体FeHxの非弾性X線散乱法による音速測定も行った。液体FeHxを高圧高温下で長時間保持することは難しく、1条件でのみデータを取得できなかったが、56 GPa、2300 Kにおいて決定した縦波音速は液体Feと比較し17%程度速く、水素は液体Feの音速も増大させることが予想される。今後再現性を含め、様々な圧力条件で液体FeHxの音速も決定する予定である。 また、高圧下における液体Fe合金の構造決定のための準備として、液体Fe-PのX線回折測定を行った。試料や圧媒体、高圧発生に用いたDAC形状、バックグラウンドの最適化により、最大46GPaまでの圧力範囲で良好な液体合金の静的構造因子データを取得するに至った。今後、取得したデータを逆モンテカルロ法により解析することで液体合金の3次元構造決定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe-H合金は常圧下では不安定なため、高圧下でFeと水素源を反応により合成する必要がある。今年度は試料形状やや水素源及び圧媒体の種類、また合成条件等を最適化することにより、再現性良くfcc-FeHxを合成することができるようになった。その結果、固体fcc-FeHxの縦波音速を68GPaまで決定することに成功した。また、液体FeHxの測定は他のFe合金と比較しさらに困難であることが判明したが、少なくとも20-30分程度の液体保持が可能な実験手順を割り出すことができ、実際に非弾性X線散乱測定データを取得することにも成功したため、今後はその再現性をさらに高め、より広範囲の圧力条件で測定を行う目処がついた。 また、液体Fe合金の構造測定に必要なX線回折測定において、種々の試行実験を行い、圧媒体、測定条件等の最適化、解析時に重要となる測定時のバックグラウンドの評価することができた。今後は、本年度最適化した実験手法を用いて、他のFe合金の液体構造測定を行うとともに、圧力範囲の拡大を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度最適化したFeH合金合成法を使用し、液体Fe-H合金の非弾性X線散乱測定を最大70GPaまでの圧力領域で行い、水素の液体Feの縦波音速に対する影響、及びその圧力依存性を明らかにする。そのために、本年度問題となった液体Fe-H合金の保持時間について、実験手法に改良を加えさらに再現性良く、長時間液体状態を保持するために実験手法に改良を加えていく。 液体Fe合金の構造測定に関しては、ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下での測定を進めて行くとともに、高圧下で得られるデータを評価する上で必要なリファレンスデータを、パリスエジンバラプレス装置を用いた5GPa程度までの実験により取得する。
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