研究課題/領域番号 |
22H01345
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
齊藤 諒介 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (90772385)
|
研究分担者 |
海保 邦夫 東北大学, 理学研究科, 名誉教授 (00143082)
高橋 聡 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (60615251)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 大量絶滅 / 大規模火山活動 / 堆積有機分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、大量絶滅時の気候変動を決めるメカニズムと陸海環境応答の解明を行う。鍵となる有機分子、コロネンは、通常の森林火災よりも高温で生成する芳香族炭化水素で、有機物から大規模火山噴火と小惑星衝突により多く生成される。それらの濃集は後期デボン紀とペルム紀末と白亜紀末の大量絶滅層準で認められている。これをペルム紀末の様々な堆積物でも確かめてその有用性を確実にし、オルドビス紀末大量絶滅について確かめ、各大量絶滅の大元の原因を確定する。さらに、寒冷化と同時の大量絶滅と温暖化と同時の大量絶滅を記録した地層中のコロネン含有比から気候変動を推定して、既知の表面海水温変化値との整合性を検証する。2022年度における主な研究成果は次のとおりである。 1. 英国のオルドビス紀―シルル紀境界の地質調査を英国の共同研究者や分担者とともに行い、層序的に連続的な試料採取を得た。英国ではこれに加え、ペルム紀末やオルドビス紀末の大量絶滅とは比較対象となるT-Jr境界やCT境界事件の地質調査も行い、層序的に連続的な試料採取を行った。 2. 山口大学では有機実験室の環境整備を完成させ、堆積岩の質量分析計による低分子解析および各種分光法による高分子解析ができる環境を整えた。 3. 分担者の東北大学では堆積岩がマグマで加熱された際に放出されるガス(特にSO2とCO2)と加熱温度の関係性を明らかにするために、分析会社に堆積岩粉末試料を送付し、一部の分析結果を得た。 4. 分担者の名古屋大学では、塩ビ製シンクやドラフトなど、岩石標本を酸・アルカリ処理を行う実験室環境を整備した。珪質岩を水酸化ナトリウムで処理する方法を試し、微化石を効果的に抽出する方法を確立した。同手法を利用して、大量絶滅期の岩石標本からコノドント、放散虫、アクリタークなどの微化石の個体を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国での地質調査は予定通り行い、試料採取に成功した。堆積岩中の有機物の有機化学分析を行うための実験室の整備も完了した。また、新たに導入した岩石の化学処理法によって、予想以上に良質な化石標本を得られるようになった。ただし、燃焼化学分析は、測定機器に不具合が生じ、予定より遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は英国で採取した地質試料や南中国で採取済みの大規模火山活動期の地層の有機化学分析を進めるために、まずは堆積岩の外側と内側の濃度差の比較を行い、地層由来以外の有機物に汚染されていないか分析する。また、採取した地質資料の粉末化を行い、元素分析や水銀同位体測定のために粉末試料を研究分担者へ送る。分担者の名古屋大学では、整備した実験室環境を利用して岩石から微化石・黄鉄鉱の記録を解読する研究を進め、地球化学的分析の前処理環境も整えていく。
|