研究課題/領域番号 |
22H01348
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
伊左治 雄太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 研究員 (80836320)
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研究分担者 |
杉江 恒二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 研究員 (00555261)
吉村 寿紘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 副主任研究員 (90710070)
荒岡 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (60738318)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 海洋鉄循環 / ヘム / 鉄安定同位体比 / 海洋化学 / 生物地球化学 |
研究実績の概要 |
鉄は海洋で最も枯渇している必須微量元素の一つである。その動態は物質循環や気候変動の駆動因子として重要な位置を占める。本研究では、鉄を含む生体分子であるヘムBの鉄安定同位体比分析法の開発を行う。本分析法が確立することで、これまで制約することのできなかった「環境中で微生物が取り込んだ溶存態鉄の供給源」を同定することが可能になる。2023年度は、2022年度に確立したヘム鉄の鉄安定同位体比分析法の分析フローの微量化を進めた。微量化に際しては、クリーンブース内において微量鉄分析に特化した作業環境を構築するとともに、鉄安定同位体分析においてダブルスパイク法を新たに採用した。その上で、ヘムBの高純度標準試薬を用いて湿式作業前後の鉄安定同位体比の整合性を検証し、20 ngFe以上のヘム鉄を単離・精製すれば正しい鉄安定同位体比が得られることを確認できた。続いて、実試料を用いて分析法の妥当性を検証した。まず、養殖マグロの背肉のバルクの鉄同位体比分析とヘムBの鉄同位体比分析を行った。200 ngFe程度のヘム鉄を単離・精製して鉄同位体比分析を行ったところ、バルクの値と一致するという結果が得られた。背肉中の鉄は主にヘム鉄として存在すると考えられるためである。これにより、本分析法が生体試料に応用可能であることを示すことができた。次に環境試料の一例としてナミビア沖の海底堆積物の分析を行ったが、この試料から単離・精製したヘム鉄画分にはまだ非ヘム鉄が残っており、鉄安定同位体比を変質させていることが明らかになった。この還元的な堆積物には元々非ヘム鉄が大量に含まれているため、分析法の応用先としては最も難しい試料に当たるが、ヘム鉄をさらに精製するための操作を追加で検討する必要が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海洋試料中の夾雑物に由来する非ヘム鉄を除去する手法を追加で検討する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
海洋試料中の夾雑物に由来する非ヘム鉄を除去する手法を検討する。この問題が解決し次第、培養藻類や西部太平洋で採取された懸濁粒子の分析を行う。
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