研究課題
1. 交流電流を用いた金属細線の接合条件の記述 金属細線の接合において接触部の溶融現象は重要であり、これまでに直流電流付与時の溶融現象を支配する因子を特定している。交流電流を用いた接合において、電極間電圧より算出される接合時の熱入力量は直流電流を用いた場合のそれより小さかった。この交流電流と直流電流を用いた場合の熱入力量の比を考慮して支配因子を拡張することで、交流電流を用いた場合の接合条件を記述した。2. 金属細線接合部の強度試験と接合条件との比較 試作した試験機により、様々な条件で接合した直径20umの白金細線の引張試験を実施した。引張強度は接合条件により異なっていたが、これと入力熱量の逆数との間に相関関係があった。一般的に引張強度と結晶粒径の逆数との間に相関があることが知られており、引張強度の相違は入力熱量の相違による結晶粒成長の程度の差異に起因するものと推察された。実際に引張試験後の接合部の結晶組織観察を実施したところ、特に破断部近傍の結晶粒が大きく成長していた。3. 製造条件の制御による長い金属ウイスカの作製 Si基板上に正方形のAl薄膜を成膜し、これをTiN保護膜で覆った島構造サンプルを提案、これを最適な300度で加熱することで、長さ0.5mmのAlウイスカを作製することに成功した。当該Alウイスカを原子間力顕微鏡チップに接着し、電子顕微鏡内で引張試験を実施したところ、通常のAlの引張強度を遥かに上回る、1GPaなる強度を有することが明らかとなった。また研磨したFe板を厚さ50nmのSiO2保護膜で覆い、これを最適な750度で加熱することにより、長さが10um以上で、直径が0.5um(Alウイスカと同程度)のFeウイスカを作製することに成功した。さらに溶液中のアルコールの種類と濃度を識別するための酸化銅ナノワイヤ溶液センサを試作してその有用性を確認した。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載の通り、申請時に計画した研究を遂行し、交流電流を用いた金属細線の接合条件を記述すると共に、様々な条件でジュール熱溶接した細線の引張試験を実施し、引張強度と接合時の入力熱量との間に相関があることを見出している。さらに独自のサンプルを考案して、太く、長いAl、Feウイスカを作製するなど、進展は順調である。
作製した単一ウイスカを接合して長尺化すると共に、接合したウイスカの強度試験を実施する。さらにポリアクリロニトリル繊維を熱処理してグラファイトウイスカを作製、これを接合して強度試験を実施する。また作製に成功している同程度の直径のAlウイスカとFeウイスカとを接合し、当該異種金属接点において高い熱電変換性能の発現を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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