研究課題/領域番号 |
22H01355
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤坂 大樹 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80500983)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ダイヤモンド状炭素膜 / トライボフィルム / 逐次構造評価 / sp2結合 |
研究実績の概要 |
2022年度は摺動による特にダイヤモンド状炭素(DLC)膜の末端官能基である水素の脱離及び環境からの導入に関する評価を中心に実施した。赤外線分光分析器(FTIR)と摺動試験機を組み合わせた試験機を摺動環境を制御できる摺動試験装置を設計・製作し、湿度10%以下のドライ条件、および湿度35%程度の加湿条件下での摺動しながらDLC膜の摺動による膜の構造変化をとらえた。水素を重水素に変化させるなど同位体に置き換えた同位体置換型DLC膜を作製し、更に摺動環境下の湿度のソースを純水若しくは重水を用いて試験を重ねることで摺動環境からの水素もしくは重水素の導入速度と脱離速度を評価した。更にメタンを用いてこの試験機の吸収係数と水素量に関する検量線を作成することによって、この重水素若しくは水素の脱離速度を定量化した。この結果、摺動の初期の摺動において、周囲環境からの水素などの導入に比べて、水素の脱離速度が高いことが明らかとなった。また、FTIR顕微鏡を用いたC-H結合の吸収に関する2次元マッピングから、摺動域のみでこの吸収が減少しており、水素が摺動部で確実に脱離していることも示された。2024度年の放射光施設でのInsituでの放射光を用いた逐次X線吸収分光測定システムの構築に向けて放射光機関との打ち合わせも行い、設置環境やその体積制限なども得、2023年度にこの装置の設計製作に取り掛かれる環境も整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイヤモンド状炭素(DLC)膜のドライ条件、および加湿条件下での摺動における構造変化の一つである水素の摺動による膜内での変化について実施してきており、おおむね順調である。また、放射光機関での実験に向けての調整も実施してきており、今後に向けての準備も順調に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はダイヤモンド状炭素(DLC)膜のドライ条件、および加湿条件下での摺動についておこなったが、今後は.ポリアルファオレイン(PAO)等の摺動油とジアルキルジオリン酸亜鉛(ZDTP)等の添加剤を導入した実際の摺動環境下での摺動に近づけていく。更に、長期摺動を行うことで、これらの摺動に伴う水素の脱離反応などが如何に変化していくかを評価していく予定である。2024年度に向けてInsituでの放射光を用いた逐次X線吸収分光測定システムの構築に向けて摺動試験機の設計製作、さらにビームラインへのインストールを試みる予定である。
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